大きくなった会

寒いけど、よく晴れてる朝でした。

今日は早くしなくてはならないよ、大きくなった会の発表会だから、ふみ、歌を練習しなくていいの?♪君は君が好き〜の歌…、
とわたしは朝から、やや緊張気味、

「本番で歌うからぁ」とふみは余裕そうに言う、歌やお芝居の練習のどころか、テレビを見て、好きなカペリート(粘土でできたフランスのキノコのキャラクター)を見て、指を動かし、舌をだして、カペリートを真似して楽しんでる。

保育園についてみたら、わりと早い、会場となるホールに行って前から二列目に座った。
ふみの担当の先生が来て、
ふみ君とD君はお寿司屋さんをやるから、途中、「ご注文は?」と客席に向かって聞く時、ふみ君のママとD君のママが注文をしてもらいたいと、
「海老をお願いします」というのを選んだ。
D君のママは玉子を選ぶ。
打ち合わせ終了、ひたすら開演を待つ。


ふみたちのお芝居は、悪いトロルが(クールのU君と優しいS君)、橋を通ろうとする動物たちを食べようとして、動物たちは「私たちを食べないでください、歌を歌ってあげますから」「お菓子をあげますから」ってお願いし、「よしわかった、それならやってみろ」とのトロルの言葉に、動物たちに歌などを披露する。
するとトロルは「早く行け」と放してくれる。

2、3人一組で登場する。
このお芝居を決める時、先生は子供たちに何をやりたいかと聞くと、
「小鳥」「ミーア・キャット」「ウサギ」、みんなかわいい動物になりたい中、わがふみは、「寿司屋にする」と言い出したそうです。

先生は、それをOKしてくれたという。
だから丸い耳や長い尻尾が付いてるかわいい生き物たちの中、ふみとD君は寿司屋のおじさんになったわけ。
どこまで自由がままのふみだか。


今日の司会はふみの担当のN先生。
N先生は、感情の起伏というか、表情の起伏すらみたことのない、いつも淡々とユーモアたっぷりの言葉を発する先生なんだ。

「司会をやらせていただくNです」と、N先生が言うと、みんな拍手した。
「とっても緊張してましたけど、今の暖かい拍手で、…、もっと緊張しました」
場内は笑う。
N先生、本当にすごいと思う。ほかの先生、園長先生も含め、大勢の前に立ちましたら、やっぱり緊張することは伝わってくるが、このN先生は、そういうところ少しもないわ。


一番最初は、4、5、6歳組の大合唱。みんな列に並んで歩いて出てくる。
あ、ふみ出てきた。
ふみは、すぐわたしを見つけた。
近づいて、なんと、大きい声で、
「写真を撮ってる場合じゃない!」とわたしに向かって言った。
なによ、みんな撮ってるんじゃないの。

場内から笑い声が聞こえる。



「♪君はきみが好き 僕は僕が好き、みんなみんな みんなが好き だからだから いつもスマイル…」
合唱は、年長組さんにひっぱられ、うまく進行している。
ふみはというと、仲良しH君と隣り同士で、少しはまじめに歌ったが、すぐH君と意味なく笑い出した。
二人は見つめ合っては笑い、少し歌ってはまた笑い、
幸いそれ以上のことはなく、なんとか無事に終わって。一安心。
はらはらすると同時に、なぜか目頭が熱くなり、涙を溢さないように、必死だった。


わたし、だいぶ涙が脆くなったなと思ったら、周りのお母さんたちもハンカチで目を押さえる人がちらほらいた。

「お母さんたち、泣くのはまだ早いよ、まだまだあるんだから、M君のお母さん?だいじょうぶですか?」と司会のN先生が、にやにやして言った。

「いえ、違うんです違うんです、わたし、ただ…」とM君のお母さんは涙を拭きながら、笑った。

次は、4、5、6歳縦て割りした組がそれぞれ出てきて、いろんなショーを披露する。

ふみのいる“にじグループ”は、手品をやる(これはわたしは全然聞いてない、ふみはなんにも言わないもん)。
ふみ、赤いシルクハットをかぶって出てきた。
お兄ちゃんお姉ちゃんと一緒に、ふみは、それらしい動きはしたが、でもほとんど、ぼーっとしてた。
お兄ちゃんたちは、シルクハットを派手に回して、どんどん調子乗って、結局帽子の中に隠してる花などが、ぼろぼろと出てきて、ネタばらしになって…、という始末だった。場内は大笑い。


司会のN先生が、「予想通り、ハプニングまったくなしで、うまく行きましたね」と言って、会場はさらに笑う。


ふみの組のトロル橋の劇の番だ。

小鳥や、ミーア・キャットなど順番に出てきて、次はお寿司屋さんの番だ。
はっぴを着てるふみとD君が出てきた!
先生のピアノで、「へい、おまち、へい、おまち、へい、おまち」と歌いながら、寿司を握る手付きで出て来たのはよかったのだが、まもなく、D君が照れ初めて、寿司を握る手はいつの間にか口元に、「へい、おまち」も聞こえなくなった、ふみそれをみて、すぐ真似して、二人は、手で口を塞いで、セットをぐるぐると回り、D君が“橋”の下のマットで足を引っ掛かって、転んだ、ふみはすぐそれを真似して、大げさに転ぶ。

起きた二人は、あはは、あははと笑って、並んで立って、セリフのところか、適当な言葉も見つからないで、ただ、ははは、ふふふと、にやにやしてるだけ。

はっぴを着てるせいか、二人の姿は、まるで売れない漫才コンビだ。(ビールケースの上に立てば、なおさらだけど)


やがて、ふみは自分がなんのためにここに立っているのかを悟ったようで、
「僕たち、格好いい寿司屋だ」と大声で言った。
会場は大受けだった。

やっぱり流れからみて、なんでここが寿司屋が登場するのか、おかしくてしょうがない。おまけに「格好いい寿司屋だ」って、ヒーローのように言うから。

それから二人はまたホホハハヒヒと笑いが止まらなくなった。

先生の合図で、「エビお願いします」とのわたしの声も、二人はまったく聞こえてない、二回も言って、ようやくふみは玩具のエビのお寿司を渡してくれた。

こうやって、お寿司屋がなんとか終わった。


その後の年長組のお芝居、なかなかのものだった。

5歳児はアラジン、6歳児のはライオンキング。
とくにライオンキング、長いセリフやミュージカル、よくそこまでできたなと感心してばかりだった。
N先生は「いかがでしたか?この劇団四季を上回る演技は」という言葉に、笑いながら、ある意味で確かにその通りと思った。


最後も大合唱「歩こう歩こう、私は元気」。

しかし今回ますます感じたことは、女の子の精神年齢は、やはり男の子より高いのかもしれない、女の子みんなしっかりしていて、与えられた役はちゃんとやりこなす。
男の子は、ほとんど照れてるか、ふざけてるか、どっちかだね。


夕飯のあと、ふみとパパに撮ったビデオを見せ、ふみは大喜び、「もっと見たい」と。
すまん!ビデオは、途中でメモリカードが満杯になった、しかもそれはふみの出番のところで…。
昨夜パパが入れてくれたカードは、すでに半分ぐらい以前撮ったものが入っていたものだった。
本当に言葉でないわ。

説明したら、ふみは泣き声で「じゃ、さっきのもう一回見る」と。
へぇ〜「写真撮る場合じゃない!」とママに怒鳴ったのは、どこの誰なんだ。


夜は、なかなか眠ってくれないふみだった。
朝は早く起きたのに、昼も寝なかったのに。
ふみは、やはりかなり緊張と興奮があったんだね。


頂いたバラ、満開。