オリオン座

昨夜は強風だったらしい、あまり分からなかった。今朝起きて、雲の動きは怪しいが、すぐ穏やかに晴れて、風も弱い。


朝から元気なふみ。


黄砂が来てる。ニュースで見ると、西日本はもう2キロ先が見えないことになってるとか。東京はそれほどひどくはないけど、空は、やはりぼんやりしていた。

黄砂はもちろん、わたしの故郷から遥々とやってきたものだ。

黄砂ね〜 
それだけは嫌だったね〜 せっかくこの回り全部が海の国に来たのにね。

しかし不思議だね、あれほどの広い海を、砂たち、どうやって渡って来たのかしら。
不思議不思議。肉眼で見えないウイルスすら、人の体にひそんで、隙を見て、税関を通って、やっとこの国に潜入できるけど、あんな大勢の砂は、よく思い通りに上空に侵略してきたね。

あ、そっか、ウイルスにはなんらかの対策があるけど、黄砂の動きを、例え把握できても、対策はないしね。だから黄砂は傍若無人で、堂々として。


モンゴルの砂漠に植林に行く日本人は、えらい。植林は、微力ながら、黄砂を征服する唯一の方法だからね。

でも黄砂を征服することができるのかしら。なんだか無理な気がして、なんだか近い将来に、黄砂は世界を征服しそうな気がして。


♪古いアルバムめくり〜
ふみと4年前の写真を見る。
わ〜こうだったんだ、生れ立てのふみは、面影はあるものの、誰?との感じもします。
ついこの前のことのような、前世のような。
こうだったこうだった、えぇぇ〜と感慨深いのわたしに対し、
ふみは見ようとしない。
理由はアルバムの最初に挟んでる、ふみがまだお腹にいる時の超音波の写真。
小さい白黒の一枚一枚を見て、最初の黒い点が、段々頭や四肢がわかるようになって、ふみは、「こわい」とつぶやく。
確かにちょっと不気味かも。


その次のふみの号泣してる写真(小さい時のふみは、号泣してない時が少ない)を見て、ふみはアルバムから離れた。


「ふみ、なんで見ないのよ。見たいって言ったから出したのに、どうしたの?」
「え?だって…、可愛い過ぎたから見たくないの」
なに訳のわからないことを言ってるの。


あ、これはふみ五ヵ月の時の写真。

懐かしい〜〜 覚えてる覚えてる。新宿御苑で撮ったわ。ふみのその時のほっぺ、ぶくぶくしてかわいいね。



借りて来た「小さな恋のメロディー」、吹き替え版ではなく、日本語の字幕はあるけど、ふみは見れないや。


ふみと出かけて吹き替え版を借りに。


「ふみ、運動足りないぞ、最近は。新宿まで歩いて行こうか」
「おー」


ということで、ふみと徒歩で新宿へ。


道道場の前を通った時、入口の木が倒れてるの見て、びっくりした。

昨夜の風はやっぱり凄かったんだ。





ふみに長袖一枚にしてよかった。暑いぐらい。

暑いせいか、途中の喫茶店みんな満席。仕方なく一軒行列に並んで、幸い待ってる人はみんな喫煙席希望で、わたしたちはすぐ呼ばれた。


席に座って、並んで飲み物を買いに行くわたしを待ってるふみは、ちょっと不安になったのか、時々わたしが見えるところまで来て、手を振って、わたしも手を振って、それを見たらまたすぐ席に戻るふみ。席が取られるのが心配なんでしょうね。


わたしはアイスコーヒー、ふみにはアイスココア。冷たいものが欲しがるのは、久しぶりだわ。


祝日の新宿三丁目は、歩行者天国になってる。

大勢の人の中に歩くふみは、急に立ち止まって、「あ、お月さま」と言った。
ふみの視線に沿って見てみたら、ほんとうだ。白い新月、切り取られた爪のような月は、ビルの間に静かにこっちを覗いてる。
いつの間にかぼんやりした空は、真っ青になった。
さっきまでの生暖かい風も、北風にかわった。


「小さな恋のメロデー」も「禁じられた遊び」も、吹き替え版はなかった。
残念。ふみ、当分見れないのね。





北風で、気温はどんどん下がり、夜、珍しく星空が見えた。


寒さを忘れて、しばらく一人でオリオン座を眺めてました。
小さい時も、よくこうやって父と一緒に見てました。
その時の星空は、ずっとずっとにぎやかだけどね。