母の日

金曜日に、知人に、「子供から母の日の絵とかもらうんじゃない?今日保育園でやるよきっと、帰ったら楽しみだね」と言われ、
あ、そっか、言われたわたしは期待してた。でもふみは絵が下手だしねと思ったりして。


帰宅して、ふみは粘土で作った首飾りを見せてくれた。
青い粘土で作った蝶々やハートの形のいくつかが、クリップで紐にかけて、先生の字でしょうか、名前も書いてあった。


「わ〜すごいね」
で、なんか言葉はないの?ママ、いつもありがとうとか、大好きとか。
「すごいでしょう、ぼくが作ったよ」ふみは得意そう。
で?
決めぜリフもない上に、その飾りを、先に帰ってたパパの首にかけてあげたじゃないか。


えぇぇ〜なんかがっかり。

「ふみ、これ、母の日のじゃないの?」とわたしはあきらめがわるい。
「そうだよ」
だったら…。


どうもふみは“母の日”の意味をよくわかってないようだ。
(@_@;)


翌朝起きて、ふみは何かを思い出したようで、
「ママ、いつもお洗濯とかして、ありがとう」と抱きついてきた。
保育園で練習した言葉が急に頭によぎったのかしら。
母の日の前日だけど。



母の日の今日は、やけに疲れを感じてならない。明日は貧血のお注射を受けに行かないと。

ふみは大好きな「おさるのジョージ」というアニメを見て、笑い声さえ出してる。
わたしは何をしたでもなく、あっという間お昼近い時間になっていた。


牛乳など買いにスーパーに行かないと。
お買い物をいろいろして、ふみは軽いの持ってくれた。
この頃のふみは本当によくお手伝いしてくれて、助かる。


カーネーションを飾りたいなと思いながら、外出する気力がなくて、ソファーに横になってうとうと。
ふみは一人で遊んでる。仮面ライダーのベルトを列車にして、あっちこっち出発進行。
ベルトの“電話”をセットする時、指を挟んだらしく、わたしのところに走ってきて、「ママ見て、血でた?」ふみは血が大の苦手なんだ。
「どれどれ?出てないよ、だいじょうぶだいじょうぶ、ママがおまじないをしてあげるから」
「ぼく泣かないよ」


こりゃ寝れないわ。でも連休からずっとあまり休んでないせいか、貧血のせいか、だるいな、少しでもいいから、眠りたいわ。


「ふみ、母の日なのに、お花も買ってない、ママかわいそうでしょう。お花を買いに付き合ってくれる?花瓶も」小さめの花瓶が欲しいから。

「え〜。いやだよ」
「母の日は年に一回しかないよ、ママは好きなことやりたいのにな、でもいいよ、疲れてるし」ひねくれてるじゃなく、ほんとうにいいやと思った。花瓶を買いに行く体力もない気がする。


少し黙ったふみは、「いいよ、行こう、お花を買いに行こう」
「いいよ」
「行こうよ」


ふたりが出かけたのは、3時過ぎた頃だった。


公園を通った時は、ふみは、「公園で遊びたいな」とつぶやく。
「いいじゃない。ふみ月曜から金曜まで、ずっと保育園で遊んでるんだから、土日ぐらい遊ばなくだって」
「ううん、まあね」
「ふみ、保育園いいでしょう」
「やっぱりおうちがいいな」
「どういうところが?」
「う…ん、昼は寝なくていいし」
「あとは?」
「ご飯の時だな、うちでは残してもいいのに、保育園の残すと先生に言われるもん」
「残すのは野菜でしょう」
「うん」


保育園の献立を見ると、昼食がチャーハンとサラダの日なんかは、ふみどうしてるんだろうと思って、両方とも大嫌いなものだから。
ふみに聞くと、案の定、「お昼、食べなくても、午後おやつあるからだいじょうぶよ、ぼくおやつは食べるもん」
保育園のおやつは、御菓子類ほとんどないけど、野菜はでないから。


以前先生にも言われたことがあって、ふみ君、嫌いなものがちょっとでもあると、ほんとうに一口も食べない時あって、と。そういう時はふみ君はお腹空かないと言い張る。


わたしは保育園の食事を感謝してる。
うちだと、どうしても好きなものを出すようにするけど、保育園はそうはいかない。けど、たとえ食べなくても、目の前に毎日のように出てくる野菜に、いつかは慣れてくる。
現にふみはトマトを好んで食べるようになったし、ジャガイモも調子さえ出てくれば、結構食べる。さらに調子が出てくると、ブロッコリーも一口ぐらいは。
保育園の食事のおかげだと思ってる。




「ふみ、ご飯を残してる時(とくに全部残す場合)、先生に怒られるでしょう」
「怒るはないよ、何で食べないのとかって言うの」
「その時ふみは、なにを答えるの?」
「ぼく?ぼくは、うんともすんともしないよ、喋らないもん」


この場合は笑っちゃダメだとわかっていたけど、わたしは声だして笑った。
「うんともすんともしないかー、なんで?」
「だってそのほうがいいもん」

そういえば、わたしに怒られる時、ふみもうんともすんともないわ、平気な顔して何を考えてるやら。


花瓶の売り場で、大きさが気にいった花瓶の前にしゃがんで、わたし迷った。
黒の上に椿の花模様のと、金粉のような上にサクラの花のが、どっちがいいのかな。

「これがいいね、ふみ、落ち着いてる、ね?」わたしは黒のを指さす。
「これがいいよこれ、このきんきらきんの!」ふみがきっぱりと言う。
キンキラキン、確かに。
「えぇぇー、きんきらきんのはちょっと」、まあ、品のあるキンキラキンだけどね。
「いいの!これが!」ふみの口調、やっぱりきっぱりだね。


「わかった。でもちょっとほかの売り場のも見てみようか」
「うん。でもこのキンキラキンの買ってぇ」

いろいろ見たが、で、キンキラキンの買った。
うん、なかなか品があって、よかったわ、うん。


おトイレに行こう。
女子トイレは混んでる。
「ぼく男トイレ自分で行く」と言って、ふみは走り去った。

すぐ出てきて。
「早いね」
「早いでしょう。何で早いか、だ〜れもいなかったから、ここはまだ並んでるの?」


ふみにパウダールームの椅子に座ってもらって、荷物をみてもらって、わたしは並ぶ。
「ママ、あっち空いたよ」
「本当だ」と言って、わたしはまだぼーっとしてる。
「あっち行けば」
あ、そうね。いけないいけない、ぼーっとしちゃって。


公衆トイレでふみを待ってもらう時、「いる?」「いるよ!」とお互いを確認する。
この前ドアの向こうにいるふみが、「いる?」と聞いて、
「いるよ」と答えたら、
「余計なことしてなーい?」とふみが。
ふきだしてしまった。昔わたしがふみに問いかける言葉だった。



お買い物が終わり、夕飯のお惣菜を買って帰ろうと地下へ行く時、ふみは出口のところのお花屋さんを見つけ、「ママ、花屋だよ、帰りここで買えば、忘れないでね、いいよ、帰る時ぼくが言ってあげるから」

ごめんね、いつもしっかりしていないママで。


帰りに、ほんとうにふみがお花のことを言ってくれて、おかげで、我が家の玄関に、母の日の今日は、カーネーションがちゃんと飾ってある。キンキラキンの花瓶に。







ベランダの小さいアジサイ、なんと、つぼみが…

ほんとうに咲いてくれるかしら。うれしいわ〜

この双子の妖精がお花たちを守ってくれてる。