はさんだ!
夕方、パパは水泳に。わたしはふみと公園の水路へ、ザリガニの水を換えに。
「ふみ、トイレ行ってから出るよ、早くー」
「おしっこないよ、さっきしたもん」、わたしがさらに口を開く前に、ふみが、「あら、そう」と。
「今のなに?」
「ママのまね」
あら、そう〜
今朝、ふみがザリガニに餌をやり過ぎたため、水がかなり濁っていて、何回も何回も入れ換えた。
帰りに、ふみと同じ組のU君のお母さんに会いました。これからU君のお迎えなんだ。
U君も保育園からザリガニをもらい、U君のお母さんが世話をしてる。
「うちのU、まだ掴めないのよ、ザリガニを。だから毎日、私が掴んで出して、水を取り替えてるのよ」
「ぼくも掴めない。だって、パパも挟まれるの。U君のママ、掴める?」ふみはバケツの中のザリガニを指さす。
「掴めるよ」U君のお母さん、ほんとうに手を伸ばして、バケツからうちのザリガニを掴みだした。
危ないっ。うちのザリガニは、ほんとうに…
遅かったみたい、ザリガニ、お得意のイナバウワーで、体を反らせ、鋏で素早くU君のお母さんの手を挟んだ!
「あ"!〜〜、どうしよう!」わたしは思わず騒ぎだし、
「あっ、ほんとうだ」U君のお母さんは落ち着いてる。挟まれたままで手を水に戻すと、水に入ったザリガニは、挟んでる指を放した。
「あ"!血が…」ふみもわたしも声を上げる。
「だいじょうぶです、だいじょうぶです」U君のお母さん、やはり落ち着いてバッグからティッシュを取り出し、血を拭き取った。
「すみません〜。早く洗ったほうがいいですね、ほんとうにごめんなさい、わたし、カバンを持ってないから、ハンカチもなくて…」、ふみは、わたしの後ろに隠れる。
ふみは血を見るのが大の苦手なんだ。
「ごめんね、ふみ君、こわかった?ほら、もうだいじょうぶよ。ザリガニにも悪いことをしたね、びっくりしたでしょうね。でもこのザリガニ、よく体をそらすね。うちのザリガニは、前のほうしか鋏が届かないのよ…」
もう〜ほんとうに、このザリガニったら、なんということをしてくれたのよ〜
明日は七夕。保育園の玄関に大きい笹が飾られて、昨日、短冊も配られた。
昨夜、パパにその短冊を渡し、
普通に願い事を書けばいいはずだが、なんとパパは、
短冊にさらに“笹”を飾らせて、そこに小さい短冊を、あのイナバウワーが得意なザリガニや、流れ星も、ここまで凝っていらっしゃるなんて…。
「いや〜だんだん楽しくなってきたなあー」
うん、本人は確かに楽しそう。