なぞのKさん
「ふみ、これなあに?」
「どれ?」
「これこれ」
「Nちゃんが書いたの、ぼくにくれた」
「Nちゃん?なんでだろう」
「しーらない」
「あ、もしかして、ラブレターかな?」
「ラブレター?なにそれ、しーらない」
“ふみ君が好きになっちゃった”のNちゃんは、なんだか紙にいっぱいいっぱい書いてましたね。ふみの名前らしき“ひらがな”は、ちらほら見えなくもないけど。
昨日の保育園の定期身体測定、ふみの胸囲は半年前より4cmも伸びてました。
ちょっとびっくり、今までは頭囲はいつも胸囲より大きかったりするふみなのに。
ふみは本当にたくましくなりましたね。水泳や柔道のおかげでしょうね。体も心も日々強くなってきてるね。
テレビの歌謡コンサートを見ていて、好きでよく口ずさむ《矢切の渡し》を、男性歌手が歌っていた。
傍で遊んでるふみは手を止めて一緒に歌う。
え〜いつの間にか!
急にふみの歌は止まった、画面を指差して、「親方?」と。
歌手は着物姿でした。
秋って、なんとなく寂しいものですね。
“実る”時期はすぐ過ぎてしまい、“枯れる”光景は長い。
肌寒く、風の音もなにげなく悲しい。
夜、パパが水泳に行きました。
正式に水泳を教わり、クロールと背泳ぎがだいぶ泳げるようになってるパパは、今、水泳が楽しくて仕方がないようです。
帰ってきたパパは、
今日泳いでる時に、初老の男性に、ある場所でわたしを見かけ、「あれは奥様ですか」と。
男性は自己紹介して、Kという苗字の方。
「こころあたりない?」主人は、目を丸くしてるわたしに聞く。
???
誰?どなた?その場所、確かにいましたが。
こころあたりは少しもない。
しかもなんでわたしの苗字まで知って、主人と家族ということまでを。
や〜きっとなんらかのことで言葉か挨拶を交わしたんでしょうかね。けどわたし、覚えてません。
ちょっとショックでした。
これは、所謂トシ、でしょうか。
こんなこと、少し前のわたしなら、ありえないですね。
わりと人の顔や名前などを覚えるのが得意なんです。
ついこの前テレビで見たんですが、人間が歳をとると健忘するのは、頭が悪くなって物事を覚えられなくなったではなく、
自分にとって必要のない情報を、積極的にどんどん削除してゆくようになってる、とのことらしい。
わたしは、もうそんな状態になったってことかしら。
確かに最近、(どこかで見たことある顔だな)と思いながら、人と挨拶をすることがしばしば。
いつかこのKさんとお会いして、
「いやだわ、Kさんって、どなたのことかと思って、ずっと考えたりしましたよ」というようなことでありたい。