写仏

今朝、ベランダに洗濯物を干しに行ってたら、植木鉢の受け皿に溜まった水、凍ってる!
「わっ」と声をだした途端、すぐ飲み込んだわたし。
ふみに聞こえたら、まだ風邪なんだからというママの忠告を無視し、薄着のまま、走って見に来るのでしょう。


寒いね〜一年の一番寒いこの時期。昨日の午後、少し雪がちらついて、すぐ上がり、相変らず乾燥してる。そのおかげで、洗濯物はいくら量が多くても、気持ちよく乾く。あとは、夜空がきれい。
寒さを忍びながら、ベランダに出て夜空を眺め、柄杓の形のは、北斗星ね。
小さい時から父親にいろんな星座を教えられ、この北斗星しか、頭に入らなかった。
七つの点で、柄杓の形だもん、なんて面白い。



保育園に行く道をしばらく歩いたら、「あっ、ふみ、カバン!」
ふみの手を繋いで走りだす。

通園カバンの大きいのを、忘れた。
週明け、きれいに洗ったシーツやお布団のカバー、上履き、外履き、全部入ってる大きなスヌーピの模様の生地のカバン。


ふみ、何も言わなかった。
ふみは、靴下履いては遊びだす、コートを着ては遊び出す、靴を履いては…、それで玄関で待ってるママは、大きいカバンを持つのを忘れてしまったんだ…と思ったのかしら。


「氷!」

この前のより、今日、張っている氷のほうが、ずっとしっかりしている。
保育園まで持っていく、と宣言してるふみは、大事そうに手のひらに氷を捧げる。
「冷たくないの?」
「冷たくない」
「そうやって持ってると、溶けちゃうよ」
そう聞いて、ふみは慌てて親指と人差し指で氷を掴む。

まもなく、「割ってみたい」と言い出す。
「保育園まで持っていくんじゃないの?」
「う…ん」、少し考えてから、ふみは氷を割った。
アスファルトの上にキラキラする三つに割れた氷を見て、「割れた」とふみは呟く。
割れたじゃなくて、割った、でしょう。



夕方5時になっても、まだ暗くない。日が少しずつ長くなってる。

お迎えに行って、廊下で先生と会い、「ふみ君、今日元気でしたよ。外で遊ぶ時、最初は、ママに言われた、今日は外で遊ばない、また咳でるからとか言って、でもすぐ外に出てみんなと一緒に鬼ごっこして…」

そうなんだ。一応ママの言ってることを一瞬でも思い出してくれたんだ。


廊下に飾ってある鬼のお面、3日の節分の日に豆撒きの時のためでしょう。
ふみの作品。

口元が上に上がって、微笑む鬼と描いたお面が多い中、ふみの厳しいお面は、鬼らしくて、思わず笑った。


帰り道に、「今日は外で遊んだ?」と聞くと、ふみは返事がない。
見てみると、ふみは目を閉じてる。
立ち止まってふみの顔を覗きこむと、ふみは目を閉じたまま、笑いを堪える。


ふみには、「ママは時々目を保育園の天井か、壁に置いてるからね」と言ってる。そして、先生からの情報を時々さりげなくふみに話したり、廊下の高いところに貼ってる写真を携帯の写メを撮ってふみに見せたり、
ふみは、ママの目が保育園のどこかに埋め込んであると信じてるみたい。


帰り道に、「ママ、今日は目を保育園に置いた?」と聞くとき、だいたいお友達とケンカしたか、イタズラして先生に叱ったかの不都合のことがあったのに違いない。
「置いたよ〜」と言うと、
「えぇぇぇ〜〜」と困った顔を見せるふみ。


週末、風邪とのことで、うちで過ごした。
ツタヤから中国ドラマ「西遊記」のDVDを続きを借りて、ふみはまた夢中に観てた。
人間の血を吸う妖怪の白骨精などが出てくる、ふみは目をテレビからそらす。
ふみは妖怪がイヤだ、それから猪八戒が気に入らないんだ。
猪八戒、ただ食べて、寝て、女の子が好きになって、ただそれだけだね」と何回もふみは言う。
今晩、ふみはまた「三蔵法師は何で猪八戒を弟子にしたんだろうね、猪八戒、食べて寝て…」と言ってる。よほど気に入らないね。

ふみは、こういったふみから見た“不真面目”なタイプが嫌いなんだということ、だいたいわかってる。
こんど保育園の劇に出てくるキリギリスもそうだった、「みんなが働いてる時に遊んでばかり」との理由で、ふみはキリギリスの役をやめ、勝手にアリさんになった。


誰もそう教えてないけどね。猪八戒も愛嬌があって、かわいいけどね。



お寺の写仏展に出品しようかなと思っている。
十代から、遊び感覚で仏像を描いたりしたことがあった。観音さまが好きで、見本をなぞるのではなく、想像と、それまで見た観音像の記憶を頼りにして描いた観音様は、菩薩より、仙女のようだった。


いただいた写仏のセットは、ちゃんとした原本があって、なぞるだけ。

今晩、お線香を立て、ゆっくりと仏さまと向き合うことに。