もう少しで春なのに

ふみは咳をし始めた。こんこん、こんこん、保育園でこうやって咳をするお友達は何人もいた。密集している集団生活、次々といろんなのをもらう。仕方ないこと、こうやって丈夫になっていくのだから。

今朝、ふみを連れて近所の耳鼻科へ。風邪だとのことで、お薬も処方され、これで週末は安心。


それから花屋に行って、パン屋さんに行って、その帰り道に、Sさんがお亡くなりになったとのメールが入って来た。

携帯をバッグにしまい、1月末という芯に沁みる寒さの中、ふみの手を繋ぎ、黙って歩く。


ふみと大きい向日葵を買って、Sさんのお見舞いに行ったのは、あれは去年の夏のことだった。
死ぬの、こわいな、と涙を見せるSさんに、わたしはただただ黙っていた。今日も同じく、何の言葉もでてこない。

いくら心の準備があると言っても、やっぱり怖いな、死にたくないよ。Sさんは声を詰まらせ、大きい涙は、無精ひげまで行き止まった。

涙を堪えて、わたしはカメラをSさんに向ける。レンズの向こうのSさん、ふみを抱えて、カメラに向いてくれた。


あれから、一回だけSさんと電話で話してた。お見舞いに来てくれてありがとう、嬉しかった、とSさんが。


もうSさんは、この世にいない。早いな、去年の今頃は、普通に元気そうだった。


今日買ったお花。


柔らかな色合い、春を思わせる。

Sさん、とうとうこの冬を超えられなかった。
ご冥福をお祈りいたします。