アメ

駿河湾産の干し桜エビをいただいて、パパはさっそくレシピを調べて、桜エビの炊き込みご飯を作りました。

上品な味で、まるで料亭のご飯みたいです。




大奥さま、緊急入院になりました。

午後、パパは下校したふみを連れてお見舞いに。

病室の番号など聞かずに行ったので、受付で訪ねることをしたそうです。

入院された側の名前と住所を聞かれて、年齢を聞かれると、
パパが、「80…」と言った途端、
ふみは「92です」と答えたそうです。


病室で、大奥さまは、呼びかけに、少しお顔をこっちに向けたようで、そして一瞬表情が変わったような、「こっちのことをわかったんじゃないかな」とパパは。


そうなんですか。大奥さま、…。


月曜日の午後、救急隊の担架で運ばれて、担架は外の柱を避けるために、しばらく止まっていて、

担架の中、大奥さまのお顔は、春の日差しの下で蒼白く、目は閉じていました。


大奥さま、春ですよ、河津桜、もう葉桜になってますよ、その河津桜の下の沈丁花の香り、おわかりになりますか。

わたしは、ただボーッと立って、大奥さまの蒼白い顔を見ているだけでした。

この春の景色、起きていらっしゃった時にご覧になれたら、どんなによかったことでしょう。



ふみに「大奥さま、どうでしたか?」と聞いて、
「大奥さま、アメが食べたいなって言ってましたよ」

?!
大奥さまは、お話しができない状態だとパパから聞きましたけど、

「本当に?大奥さま、アメが食べたいって?」
「うん。アメ食べたいなって、僕はアメ持ってないから」

どういうことでしょうか。



大奥さま、今月末に満92歳です。立派です。




夜、帰りの坂道を登って、ふと顔を上げると、目の前に細く、だけど大きい三日月がありました。