身近で

夜が明けたか明けてないかの頃、薄暗い窓が、急に真っ白に照らされて、
!!とうとう、火星人光臨!かと思いきや、

ゴロゴロ、ピカー、ゴロゴロ、ピカーー。


なんだ、雷かーー。

聞こえない、見えない、起きたくない。



でも、お目覚めのラジオも間もなく喋り始めて、やっぱり起きなくちゃ。ポリーも喋ってるし。
「ポリーちゃん、ポリーちゃんちゃん」、ポリーは本当に自分の名前が大好きみたい。


ふみが学校へ出たすぐ、雨がどしゃぶり。これじゃずぶ濡れになるんだろうね。


落雷がなさそうで、まだよかったが。停電してなくてよかったが。


気象、激しくなりましたね。物騒な世の中。



昼過ぎには、晴れてきました。

雨傘を持って出て来たもんで、仕方なく雨傘をさしてふみの学校へ。
今日は保護者会なんだ。



学校への信号を曲がると、「おっ」とS君がわたしを見て。その隣りは、ふみ。


「ふみ、プールのバッグは?」今日はプールの最終日で、雨だから持って行かなくていいんじゃない?と言ったが、
「もし午前に雨がやんだら、プールはやるよ」とふみは案外カタイ。


手に傘を回しながら楽しそうにS君と喋るふみは、プールのバッグを持って帰るの忘れたね。


「ママがプールのバッグを持って帰ってね」とふみが、さらに、「あとこれも」とふみは、びしょ濡れの靴下らしきものをわたしの手を押しつけて。
「あ、傘も」

「傘はダメよ、また急に降って来るかもしれないから」

ふみの濡れた靴下を持って、学校へ向かう。



保護者会は、夏休みを振り返る、二学期の予定、注意事項、など。


担任のN先生は、夏休み中、広島まで一人旅して、原爆記念館も行って、「子供たちに、なにか伝えられることがないかなって」と、N先生は冗談混じりで、ダジャレ混じりで、女性だけど、やはり、かっこいい。


お母さんたちも一人一人、夏休みの印象に残る事を発表して。

お母さんたちは、みんなトークが上手で感心する。
必ずオチがあって、自分の話しに自分で突っ込んだり。笑いを誘う。


転校生のお母さんの番だ。
「私は、子供に、貧しい国の生活を見せたくて、カンポジアに行って参りました。もう、うちの娘みたいな年の女の子が、物売りをして、走ってきて、ねね、買って買ってって、もう私(涙を拭き)、やはりそういう貧しい国の存在を、子供に見せるべき、知らせるべき…」


おやおや。

ちょっと、上から目線しすぎやしませんか。ご立派に見えるけど。

カンポジアと言うと、素晴らしい世界遺産のアンコルワートを、お嬢さんに見せればいいじゃないですか、せっかくなのに、こんなにステキな文化のあることを、伝える見せるべきではありませんか。

貧しいだからって、涙を流すのは相手に失礼だし、自己中心だと、わたしはいささか違和感を覚え。


世界は広い、それぞれの事情、それぞれのサダメというもんがある。

勝手に人を同情したり、まして涙をしたりするのは、ちょっと浅いというか。


それに貧しい人を、教育のために見たいのなら、日本国内で、一家餓死するニュースもちょくちょく見られますし、わざわざ海の向こうへ見に行かなくたって。


わたしは、やはり違和感を感じてならない。

ほかのお母さんもシンとして。


わたしと同じく、人間の傲慢さを味わっているのだろうか。


昔、インドに行った知人がわたしに、キリスト教徒の話しをしてくれて。

道端で皮膚病で化膿して苦しんで、だけど病院へいけない人に、一緒に行ったキリスト教徒は、その苦しんでる人の手を握り、
「私は何の力もありません。あなたの役に立てません。だけど私は、真心であなたのためにお祈りをいたします、そうさせてください。少しでもあなたの苦しみが減るために、お祈りさせてください」と、そのキリスト教徒が相手の手を握り、お祈り始めて。

「正直、汚くて、私は見ているだけでもょっとつらかった。あのキリスト教徒、本物だ」と知人が。

本物だと、わたしも思いました。そしてその場面を、映像と変わって、わたしの脳裏に刻まれて。


人間は、生ぬるい気持ちで、相手がかわいそうだの、不憫だの、言うのは、失礼で無礼。
それはあくまでもあなたの判断にすぎない。


そういう一見慈悲で立派に見えるかもしれない人間に、ちょっと、感心できません。





自由研究の展示があって。ふみのは、紙2枚。

五円と十円と一円を、順番に水の中のお碗に投下、事前に自分で入る確率を予想し、
その理由の述べ、結果の検証。というものだった。


50回ぐらいかな。たしかに本人は黙々と実験をやっていたね、そう言えば。

あとは、パパと一緒に、オープンレンジで陶器を焼いて。

その提出したはずの陶器のお皿は、展示の場所ではなく、机の中に発見。

出来上がったお皿は、ふみは気に入らなかった。
さらに蟹を描くつもりの絵も、気に入らなかった。


でも一生懸命作ったんだからとふみを説得すると、渋々と手提げに入れて学校へ持って行って、提出した、はず。

やっぱりしなかったんだね。

お皿を出して、N先生に見せたら、
まったく存在を知らなかった、とN先生が。「そうですか、ふみ君、そんなに嫌だったんだ、じゃ、本人の意見を尊重し、提出しないことにしましょうか」

N先生、かっこいいな〜


ふみも、せっかく苦労してつくったのに。


保護者会が終わって、わたしは急いで仕事へ戻るため、残ってお喋りすることがなく、階段へ向かう。
真正面、K先生が。
深々と頭を下げたら、先生、小走りで近付いて、「彼、逞しくなって、しっかりして、落ち着きも、もう、すっかりお兄ちゃんになったね」
「先生のおかげです」
「いいえいいえ」
「一年間、本当にお世話になりました」
「いいえ、はい」



玄関に降りたら、「南門が閉まってます」との紙が。
へぇ〜、正門はわたしには遠回りなのよ。

用務員の男性が来て、「南門、閉まってる。4時過ぎるといつも。開けますよ、だいじょうぶ」とカギを持って。一緒に校庭を通って、南門まで。


わ〜、カンボジアに行かず、日本で、優しさをいっぱい発見したほうがいいよ。