憧れ

水曜日は、映画を女性が千円で観られる日で、何かを観ようと思ったのですが、

今日は、ふみの散髪を予約して、昼すぎ、放課後、ふみと駅で待ち合わせてますから、映画は、ぴったりの時間のが、なかなかないです。



ならば、夕方は、ふみもパパも水泳で、夕御飯に、ふみの好きなエビシュウマイを買って来ようと、わたしは歩いて新宿へ向かいました。


涼しくなってから、歩きたくて、時間さえあれば、歩きたくて仕方がないです。


イヤホンからは好きな歌が流れて、爽やかな曇りの日に、それでも好きな日傘をさして、わたしは、自分の時間を享受します。
自分の時間、一人で歩く、おまけに好きな歌が聞けて、頭にいろいろな好きなこと(映画やドラマのシーンなど)を考え、もうわたしの至福な一刻であります。


よかったですね、もうあの猛暑から解放されて、秋は、ちょっともの寂しいですけど。

信号に立ち止まったら、右から、誰かが顔を覗き込んできました。

びっくり。ふみの同級生のお母さんのTさんでした。

「すみません〜、聞こえてなくて」とわたしは慌ててイヤホンを外して、

「いいのいいの、イヤホンが見えたから。で、どちらへ?」

「ちょっと、新宿のほうへ」

「お散歩?私もですよ。私は、図書館に行こうかなって」

なら、途中までですね。慌てて歌を止めて、イヤホンをしまい、Tさんと一緒に、お散歩。


図書館は過ぎました。
新宿に着きました。
Tさんは、予定を、わたしが行こうとしているところへ変更しました。
わたしは、急遽、違う場所へ。


(((・・;)


面白いほど、面白いです。

でも別にTさんが苦手でもなんでもないです。
お話がとっても楽しいお方です。

じゃ、いいじゃない、と言われますと、やはり一人のほうが、気が楽といいますか。


目的地でもない建物に入ってしまうわたしは、魂を飛ばして、このぼーっと立っている自分を、しばらく上から俯瞰して、
やはり、どうしょうもないな〜
一生こうでしょう。直らないよ。

という診断を、魂が下さって。


Tさんと、お散歩ながら、どんな話でしたっけ、
アイドル、そうだ、アイドルや、追っかけの話しでしたね。


長身で、笑顔が素敵な、知的なTさん、某歌手のファンクラブに入っていることを聞いて、

「え〜〜」とわたしは思わず。

「Hちゃんのママも入ってますよ、ジャニーズの、うちの母親はジャニーズのOくんが大好きで、私はやはりFだな、歌はうまいのが言うことがないですけど、コンサートのトークが、すごくいいのよ、惚れ惚れする…」

へぇ〜、やっぱり、思わず。

「みなさん、何かのファンクラブに入ってるんですか」


「多いじゃないですか?誰かしらのファンフラブに入ってる人が。誰か好きな歌手とか、ないです?そこまでのおっかけしなくでも、定期的にその自分の好きな歌手のコンサートに行くとか、生活がメリハリが出て、楽しいですよ。そういうの、ないですか?」

「わたし?あ〜、あまり…、あ、そうだ、先月、握手会に行きました、×××の」

「へ〜?ファンなの?」

「ファンというわけでは…、ファンクラブも入ってないです、というか、考えたことも…、その人の歌が好きです、上手ですから、あと、相棒に出てましたから」

「ふうん、ファンではないですね。ふうん、じゃあ誰のファンですか」

「あの…、あ、高倉健

「たっ、え?!!、あ、なんか、渋いですね」


ほらほら、だから“論外”だってば、わたし。


(しかしな〜、この場合、高倉健なんて、出ます?普通…)と自分も思うわ。


「で、高倉健のファンクラブに入ってるわけですね?」

「へぇ?高倉健もファンクラブ、あるんですか?」

「え?!知らないの?あるんじゃないかな、じゃ、入ってないんだ」

「ああ、入ってないです、そういうのじゃなくて…」


じゃ、どういうの?わ、わかりません。



「そうですか、みんな、何かしら入ってるんですね」

「うん。ジャニーズとかは、ファンクラブ入ってでも、コンサートのチケットがなかなかとれないのよ」

そうなんだ〜。

「別に、そればかり追っかけてるじゃないんですから、年に何回そのコンサートがあれば、精神的にウキウキしたり、頑張ってオシャレしたり、楽しい時間、幸せな時間が過ごせて、本当にとってもいいことですよ、」


そうでしょうね。心からそう思います。だけどわたし、誰のファンになればいいんでしょう。

前回の握手会で、わたしは、ファンの世界に対し、だいぶ考えが変わりました。両方ステキと思いました。

握手した俳優さんの、あるファンの方のブログを偶然、読ませて頂いて、
感動的な何かが、じわじわと湧いて来まして。


人間は、自分と接点もない、遠い存在の一人に、あそこまで無償の寛大な“愛”を持って、黙々と見守って、無条件にその人を応援し、見返しを求めることでもなく、ただそれだけで幸せ、それだけで満足。世の中、こんな偉大な情感って、あることに、脱帽。


わたしは、その、楽しいのだけれど、せつない感情に涙が出そうになって。

こころから、そのファンの方を尊敬してしまいました。



ファンって、なんなんでしょうね。今まで、考えたこともなかったです。



夕方、ふみのスイミングスクールの待合室で、Hくんのお母さんと隣り同士に座って、いつも忙しそうなHくんのお母さんは、まさかね…、と思いましたが、一応、「誰かのファンクラブに入ってます?」とわたしは尋ねてみました。

「あたし?ははは、ジャニーズのYくん」

「?!…、そうですか」

「実はね、最初はそうでもなかったのよ。主人のお母さん、私の義理の母が、そのYくんの大ファンで…」

「お母様が?」

「そうなのよ、もう義理の母の部屋を見せたいぐらい。部屋中ポスターだらけ、CD、写真集、もうね、女子高生の部屋かとの感じで。ま、そのお陰で、義母は若いのよ、気持ちが、外見も若々しいし。やっぱりね、盛り上がる時が定期的にあると全然違うから。で、Yくんが昔グループの時は、コンサートのチケットが取れないから、義母に、頼むからファンクラブに入って、私がお金を出すから入って、って、チケットを応募のためだったけど。その後、ソロになって、チケットも取りやすくなって。一回私も行って、行ったらね、やっぱりあの空間、あの時間、やみつきになるのよね、もう次また行きたいというか、Yくんはもちろん好きだけど、そういう盛りあがってる自分がよかったのよ、そういうのとっても大事だなって思って…」


Tさんの話しも、Hさんの話しも、すんなり心に入ってしまって。


へぇ〜

握手した俳優さんのあのせつないファンの方も、
盛り上がる自分が楽しいお母さんたちも、
素晴らしいこと。

誰かのファンになろうか。
誰の?