サスペンダー
「ふみ君、紙を握ってなかなか提出しようとしません。困っている様子でした。おうちの方ともう一回よく話してください」
担任のN先生が、こう、連絡帳に書いてまして。
トップアイドルグループのコンサートに小学生のふみたちがでることに盛り上がる自分の夢は、シャボン玉のように、消えて。
ふみの堅い意志により、不参加となりました。
カップ麺様のバカー!!!泣いてやるぅ==
泣いてはいないが、わたしは、とってもがっかり。ふみは、鼻歌を歌うほど。
ああ〜楽しみにしていたのにな〜 本当にがっかり、落胆。楽しみにしていたのにな〜
「ふみ、×××という存在はね、例えばね、被災の方たちのところに行って、頑張ってくださいと声かけて、握手して、歌を歌って、それによって、たくさんの人が、頑張ろうとの気持になれる、けど、総理大臣が行ったって、別に誰もなにも思わないよ。それほどの存在だよ、あ〜、なんで〜」
「わかった。次また×××の舞台があったら、ちゃんと出てあげるからね」
次?!あなた、×××を何だと思ってるの?そんな一々チャンスなんぞ来ないよ、一生一度あるかどうかなチャンスなのに!
それに、コンサートの会場は、これで最後、もうオリンピックのために壊されるのよ、完成の時は、もうふみは中学生よ。
あ〜、悔しい〜。がっかり。
今日は気温は高いが、湿度なく、爽やか。
仕事で銀行へ、喉が渇いて、秋だと思って、うっかり熱中症になったらと思い、お店に入り、飲み物を買いに。
白い半袖のシャツ、水色のハーフパンツにサスペンダー、色白の小さい男の子が、お母さんといました。
お母さんの手を繋いで、言うことを聞いて。
あ〜、ふみ、昔もこうだったね。
色白で、同じ水色のハーフパンツを履いて、サスペンダーもよく使ってました。
「自分で、自分で」「ふみちゃんが、ふみちゃんが」と言って、小さい反抗はあるものの、わたしを頼って、従ってました。
今は、すっかり日に焼けて、いつも汗びっしょで、毎晩腹筋を50回をする、生意気ばかりの少年になって、
あんなチケット入手困難なコンサートの舞台に上がるのを勝手に拒否する、少年になって。
もう…。と、あの小さい男の子を見入るわたしです。