ありがとう

夕べは、9時、10時あたりに胸騒ぎがして、
心配してるから、というより、ふみの胸騒ぎを感じた気がします。


でもさすが疲れたのか、そのまま10時半に眠りまして、
今朝は4時ちょっと過ぎに起きました。


パパと6時の電車に乗りました。




病室に入ったら、ふみはベッドに正座して、テレビを観ていました。


ふみ、やはりあまりよく眠れなかったって。
10時過ぎに、やっと眠れて、夜中3時半に目覚めて、看護師さんがきて、なんとかまた眠ったって。


7時までは最後の水分を摂り、あとは待つしかないです。


ふみは、ちょっと不安がってます。


紙飛行機を飛ばし、同室の男の子もやりたいやりたいと言って、お母さんは、疲れちゃいけないと止めましたら、
男の子、泣き出して、

わたしはふみに、紙飛行機を止めるように説得、


お母さんは、泣いてる男の子を抱っこして、ふみに、「ごめんね、ずっと入院して、ちょっとストレスも溜まってるからね、ごめんね、遊んでいいよ」と廊下にでました。

男の子の悲しそうな泣き声を聞いて、胸が痛みます。



8時40分に、看護師さんが、ふみをお迎えにきました。




病室のベッドごと押して、そのままの移動です。



移動中、ふみは緊張してるからこそか、饒舌になって、ずっと看護師さんに話しかけて「麻酔から醒めたら、どんな痛み?わからない?例えば擦り傷ぐらい?足の指だしね、脳から一番遠いから、たいしたことないよね…」

看護師さんは、ずっと笑ってました。

いくつもの手術が同時進行のようで、手術室への扉が開いた途端、
名前の確認の声、うろうろしてるピンクの服、青い服、さまざまな泣き声、

扉のこっちには、親達が子供と別れをして、

小さい子ども「ママ、ママ」と抱き抱えられて、お母さんと離れて、

目頭を押さえるお母さんたち。

顔が強ばってるお父さん、

お母さんの手を握るお祖母さん。


わたしは、意外と落ち着いてました。

ふみの手を握ると、珍しくふみの手は冷たくて、「緊張してるね、冷たいよ、手は」

「うん、冷たいかも」

ふみのベッドは手術室への通路に入り、名前の確認、生年月日の確認、
きちんと答えるふみの声が聞こえてます。


パパと待合室へ。
待合室は、親達は、本を読んでるか、スマホをやってるか、静かです。


今日もよいお天気ですね。暖かくて。


予定の二時間、あっという間のように過ぎてしまい、わたしたちは、なかなか呼ばれなくて。

でも、不安の気持ちは、ありませんでした。


もう少し経って、主治医の先生が入ってきました。

オペの服とマスクのまま、大きいカメラを持って、中の画像を再生させながら、説明をしてくれました。

なぜか、ぼーっとして、先生の話、よく耳に入らなかったわたしです。



麻酔が醒めるまで、あと30分ほどかかることだけ、聞こえてました。


30分経って、出て来ないや。

40分、50分、

さすが心配になって、わたしは手術室の入り口の前の廊下をうろうろ。



先生や看護師さんが入るたびに、二重ドアの向こうが覗けます。

手前のベッドに、一人子どもが横になって、
一人女性が、柵越しに何かを話してます。

二重ドア、また閉まります。


待合室に戻って、
そういえば、従兄が手術を受けて、出てきた時は、もう青白な顔をして、たったの何時間かで、頬が痩け、目も凹んだように見え、唇も白くひび割れして、
体にたいへんな負担だったことが、よくわかりました。

そのことを思い出して、パパに話しました。
ふみも、わたしたちの思ってる以上に、変貌して出てくるのかもしれません。


さらに10分経って、看護師さんが呼びにきました。

パパとさっそく手術室への入り口前で待機。

二重ドアが開くと、さっきの手前のベッドの横になってる子どもが起き上がってました。

その子が振り向くと、ふみではないか!!


ふみは、管の差してる左手を上げ、こっちに向かって、振ってみせました。

パジャマではなく、用意した白い半袖を着ていました。

パパは思わず、「手、手、そっちの手を振って。ダメじゃない」と言って。

いろんな管を差してるからね。


ベッドのまま、ふみは運び出されました。

ふみ、麻酔が効くまでのことを、いろいろ思い出して、話して、
「…麻酔効いてから、もう覚えてない。ぼくのイメージとしては、ノコギリでやったんじゃないかな、で、ぼくの骨が跳ね返して…、や〜、ぼくの手先は、あまり器用じゃないから、お医者さんには、なれないな…」




エレベーターに乗り、病室の階へ。向うから歩いてきた医師が廊下のドアを開けて押さえてくれて、

ふみは、大きい声で、「ありがとう」と。

男の医師二人、「おおー」と感心してました。

だって、管もさしてるのに。


「××くん、戻ってきたよ〜」と、ふみは、病室に戻ると、小さい男の子に声をかけて。


ふみは、とにかく「痛くない」と。

ほんとうに安心しました。

私がパパに「下でご飯を食べて、交代であとでわたしが行く」と言ったら、

ふみは、「ママ先に行ってよ、パパに本を読んでもらうから」

「ふみは寝たほうがいいよ」と言った途端、

「眠くないよ、痛くないし、早く行ってよ」


下で、ツナのおにぎりを買って、結局あまり食べたくなくて、サンドイッチにしました。


部屋に戻り、パパと交代。

部屋のHくんのところに、スタッフが来て、話かけてました。

そのスタッフの声を聞いて、ふみは急に、「Kさん〜、Kさんだね?」と、


Kさんと呼ばれた女性は、「あれ?」と言って、こっちにきました。
昨日、ふみを連れてあっちこちを見学した女性でした。

「ふみくん!もう、終わったの?」

「うん、だから、最後のスタンプ、もらおうかな」とふみは、引出しを指差して、「ママ、それ出して」

「スタンプね、すごいね、覚えてるんだ、スタンプがいい?シールもあるよ」


引出しから、案内図のような紙を出して、いくつかのスタンプが押してあるのです。

そういえば、昨日、手術の器具を説明したあと、スタンプ一個押して、「最後のは、手術が終わったあとね」と言ってましたね。


ふみはシールを選ぶと、「ママ、その恐竜のシールね」


言われた通り、恐竜のシールを剥がし、ふみの紙に貼りました。

ふみ、眠りました。


ふみ、お疲れさま。
よく頑張りました。ほんとうに。



我が子を眺めて、感無量のわたしです。