紙飛行機

今朝は順調に6時3分の電車に乗りました。



病室の窓からは、今日は富士山がまったく見えなくて、春の霞で。
どんどん春本番ですね。



Hくん、お腹の調子がよくなりまして、明日、予定通り手術できそうです。

よかった、ほんとうによかった。ホッとしましたわ。



Hくんの担当医は、昨日も今日(日曜なのに!)も回診しました。

結構、有名な先生だそうです。長野にいたり、沖縄にいたり、アメリカにいたり、

手術の予約は常に満杯で、なかなか取れないそうです。もし今回逃したら、あといつになるかは。

「先生はほぼ休みなしでやってますよ、ここで寝泊まりしてるんじゃないかな。私は、“だいじょうぶですか?”と聞いたら、“だいじょうぶですよ、自分なりに休み休みしてますから”と話して」とHくんのお母さんが。

その先生は、毎日回診でHくんを見に来ますが、《白い巨塔》のように、後ろに医師が何人もついて、ぞろぞろ。

ところでその真ん中の肝心な先生は、白い巨塔の財前とまったく違って、
ラフな格好で、雰囲気も、職業不明というか、とにかくお医者さんには見えないです。Hくんのお母さんの話では、性格もホァ〜ンとして、せかせかなところ全然ないと。なかなか面白い先生だそうです。



Hくんのお母さんは「…テレビの占いを毎日チェックして、なんかここのところ、あまりよくなくて、心配…、厄払いで、あっちこちお詣りも行ったけどね」と。





看護師さんがきて、ふみの足を見ます。

「ね、毎日さ、何回も見るんだけどさ」とふみは急に、

「三回だけですよ」と看護師さん、

「あ、三回、その三回、なにを見てるの?だってさ、親指しか見えないじゃん、手術のところ、見えないでしょう、だから、見る意味あるの?何のため見てるの?おかげでさ、テープはもうゆるゆるだよ」

「そうかそうか、テープは新しいのと換えるね。毎日三回見るのは、それは、親指とか、手術してない指もチェックしないとダメだから」

「なんのチェック?」

「例えば、指がこんな色になってないかとか」看護師さんは自分の手の指先を強く押して、紫色っぽくさせて、ふみに見せ、


「こんな色なったらどうするの?」


「それは先生を呼びますよ」

「先生を呼ぶんだ」

……。



入院の前日に、ふみの学校の担任のN先生が、ふみにお手紙を下さったのです。


もう動けるようになったから、N先生に電話をしようか、と言ったら、ふみは、恥ずかしいからと言って、しようとしなかったです。

廊下に公衆電話があるのに。



10時のおやつの時間に、看護師さんがきて、「シャワーしようか、今なら空いてる」と。

え!? 退院までもうできないと聞いてるから、まさか今日入れると思ってなくて、とても嬉しかったです。


看護師さんにシャワーを浴びさせてもらって、ふみはちょっと疲れた様子。

毎日ベッドだけですからね、体力だいぶ落ちたんじゃないかなと思います。


お昼はハンバーグだが、スポーツドリンクとゼリー付き、でした。いいのかしらね〜





Hくんが、なんの病気か聞かなかったです。
Hくんのお母さんもふみは何の手術か聞かなかったです。

お母さんは“手帳を持ってるから、福祉タクシーは安く乘れる”とおっしゃってたから、障害と認定されてるのでしょうね。

Hくん、午後も泣いてました(普段は優しくて、ちょっと照れてる子)「自分で歩くのぉ! 手を繋ぐのイヤ!!」と、

お母さんは、「危ないから、お願いH、明日手術だから、なにかあったら…」

それを聞くとHくんさらに号泣、

そんな号泣の中、わたしはふみの枕をベッドの柵に載っけて(ふみは座ってテレビを)、その枕で、少し眠ってしまいました。

目覚めたら、Hくんは一人で静かにベッドでゲームをやってます。

「あのね、飛行機を作れるんだよ、ニンテンドウ」、Hくんは、白くて細い、とても清潔感のある顔立ちです。

「そう〜、飛行機、すごいね」

「でもね、H、あまり上手じゃないの」

「そう〜、ママは?」

「お片付けに行ったの」


わたしはポケモンを夢中に見てるふみに、「ママちょっとコーヒーを飲んで来るね」と言って、5階の売店に降りたら、
Hくんのお母さん、売店の前の椅子に座って、一人 でコーヒーを飲んでました。


やはり、声をかけませんでした。



ふみを押して、廊下の本のコーナーで、絵本を見ました。

《ミッケ》の本で、二人一生懸命探したり、やはりミッケできないのもありました。

病室に戻り、体調よくなったHくん、ふみのベッドに近付いて、紙飛行機を作ってほしいと言って、
ふみ、すぐ「なに色がいい?すごいの作ってあげるね、待っててね」

Hくんのお母さんが、「ふみくん、ほんとうに優しいね、うちのお兄ちゃん、こんな優しくないよ。…、お兄ちゃん、今お祖母ちゃんが面倒看てる、もうHは、お兄ちゃんの名前を忘れそう…」


真っ赤な夕日。
真っ赤な夕日に照らされ、ふみとHくん、一人ベッドの上、一人ベッドの下、紙飛行機を飛ばして、歓声を上げてました。