靴下
夜中目覚めて、寝坊したのかなって慌てて起き上がり、時計を見てみたら、
3:27。
また眠って。
目覚ましが鳴って、けど、どうしても起き上がれなくて、もう少し、もう少し、結局起きたのは、5時でした。
8時のシャワーに間に合うように、 パパのお着替えを持って行かないとね。
昨日パパが来た時は、退院に備えて、お借りした車椅子を持ってきたので、ほかの荷物は持てなかったです。
8時に病室に着きました。
明日、退院できればね〜
そうしたら朝、もう少しゆっくりできるんですね。
8時40分、看護師さんが、同病室のHくんを、手術室へ運びにきました。
看護師さんが、「ね、Hくん、好きなおもちゃ一個だけ持ってていいよ、どれにする?」
少し迷ってからHくんは、「これ!」と、タオルを選びました。
そのタオルは、いつも手に持って、匂いをかいだり、噛んだりするタオルです。
「このタオルね?よし、じゃ、検査に行くよ、今日は検査だけだからね、全然怖くないよ。そういえばHくん、なんの匂いを選んだの?マスクの匂い」
「この子ね、カップラーメンの匂いがいいって言ってるんですよ」とHくんのお母さんが。
「カップラーメンの匂い?!アハハハ、いいね、それ」と看護師さんが、
「そんなのないでしょうって言っても、やっぱりカップラーメンの匂いがいいって。この前の一時外出の時に、カップラーメンを食べたんですよ、もうおいしい、おいしいって…」
手術の全身麻酔の時に、まずマスクから麻酔の気体が出ます、それに匂いを混ぜることができるのです。
いちご、バナナ、ふみは、バニラを選んでました。カップラーメンは、なかったな〜
「Hくん、ベッドで移動するね、いや、抱っこにしようか、抱っこでもいいよ」と看護師さんが、
「ベッドでいいよ」とHくん、
お母さんが「あまり意味わかってないかもしれないね」と。
Hくん、意味ちゃんとわかってると思います。今日が手術だとのこと。
大人の連日のやりとりは聞いてますし、ベッドごと運ばれたふみが手術に行ったのもわかってますし。それにHくん、手術はこれが初めてじゃないですから。
でもHくん、なにも言わなかったです。
とても落ち着いてて、穏やかで、笑顔さえ見せました。
行ってらっしゃい、Hくん。
「Hくん、頑張ってね、だいじょうぶだよ」とふみ。
Hくん、静かに手を振ってました。
部屋は一気にガランとして。
「ママ泣いた?」
「泣いてないよ」
「うそ、泣いたよ」と言うふみ、眉を上げて、瞬きをして。
涙を我慢してるのわかります。
ふみ、やはり心の優しい子ですね。
パパの靴下を持ってくるの忘れました。
昨日、Hくんのお母さんが、病院の近くにユニクロがあるとおっしゃって。
マクドナルドハウスで泊まるお母さんたちは、そこでお着替えを買ったりしてます。
「入ってくる時は、まだ寒い時期じゃない、暖かくなって、もう服がなくて」
Hくんのお母さんが教えた方向に歩きます。約15分ほど、ありました。
ふみの半ズボンまで買って、また歩いて帰ってきました。
午後、男性の看護師さんがきて、ふみに体拭きを。
脇の下は、くすぐったいと、ふみはケラケラと笑って。
同じ病室に、新しく二人女の子が入ってきました。
一人3年生、一人2年生、一人おとなしい、一人対照的なおてんば。
ふみは女の子だと見て、がっかりの様子です。
Hくんの代わりに、一緒に紙飛行機を飛ばしてくれるお友達が来ると思ったみたいです。
「Hくん、もうここに戻らないかな」とふみが。
「しばらく集中治療室みたいよ」
「寂しいな」とふみが。
外来患者の合間との診察ですが、
結局5時まで待ちました。
「先生、ここ、ギプスのここが、長すぎて、膝の裏のここ、当たって、痛いですよ、短く切ってもらえますか?」と、ふみ。
「どこ?」
「ここ、もうキズが出来たんじゃない?」
「キズはないよ、ここね?わかった、ちょっと切りましょう」
ちょっと切りました。
「もっと切って、まだ当たってる」
もっと切りました、「もうこれ以上切ったらね、抜けちゃうから」
「じゃ、いっぱいガーゼを巻いて」
ふみ、膝を曲げたり、伸ばしたり、確認してました。
サイズを合わせて、松葉杖をお借りしました。
ふみ、すぐ松葉杖を使って歩いてみました。「そこの荷物がジャマ、スペースがない」と言いながら、松葉杖が楽しくて、診察室で練習。
でもまだ使えないですから、両方の松葉杖を同時に上げて、足も同時に上げて、ジャンプじゃないそれは。
笑ったふみは、「車椅子要らない、もう松葉杖で帰る」と。
それはダメですよ。
夜、うちの最寄りの駅に降りたら、沈丁花の香りが漂ってました。
そういえば、毎日この時間に、この場所で、この香りに癒されてるわたしですね。