蝉鳴
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夜、塾の宿題をするふみ、よく見たら、問題集の回答集を堂々と目の前に開いて、写っています。
そんなバカな!
こんな公然とした不正だなんて。
怒る気持ちもありますけど、それより、“どうして?!”“なにをしたいの?!”との不可解です。
黙っていたふみが、段々自分の気持ちを述べ始めたのです。
お友達と公園で遊べば遊ぶほど、勉強に対して疑問が湧く。
どうして遊ぶのを犠牲して勉強するのか、K君とU君と遊ぶのは楽しいのに。
もう、何のために勉強するのかすら、わからなくなった。
なんで勉強はしなくちゃならない!
…
「どうてあれ、まず不正はダメ、どんな時代どんな国どんな理由でも、不正はしたらダメ!人の信頼を裏切ったのは、なにより重いことで、たったの一度でも、“信用できない人”と思われる、信用できないと思われたら、もう生きる道ないよ。なにをやっても、信用を疑われること、しちゃダメ!」
「ごめんなさい」ふみは小さい声で。
「ママ、ショックよ、答えを見るようなこと、カンニングでしょう!ウソをつくことでしょう。ママ何回も何回も言ったはず、一つウソをついたら、バレないように、10個も100個も付かないと辻褄が合わなくなるの、そんな人生が始まったら、先がないよ!ウソは、ダメ!ほかのことを置いといて、ウソは…」
「うん」とふみは小さい声で。
PTA主催の校庭で一泊キャンプ、
ふみの要望に応じて、無理を言って、参加できるようにしました。
そのため、寝袋も買いました。
が、答えを見ながら宿題を写すなんて行為、許せなかった。宿題をしないよりよっぽど悪い。
こんなことを平然として、なにも罰をうけないのは、これからも平然と不正をできることです。
「ふみ、キャンプ行けるのかって、これでわかるよね」
「うん」
「文句ないよね」
「うん、悔しいけど」
「ママも悔しい。お金だって払ったし、寝袋も買いました。悔しいよ、こんなふみに裏切られたとは。約束が違うじゃない」
「わかった、もう寝るよ」
ちらほら、蝉の鳴き声が聞こえるようになりました。