ふみとの日曜日

ふみが保育園に入って、今月末で丸一年が経ちます。
一年は、長かったような短かったような。振りかえると、少し大袈裟かもしれないけれど、感無量の一言でしょうか。ふみが今日まで来るのには、いろんなことがありましたから。


ふみの保育園のシーツ代わりのタオルも一年でだいぶ古くなりました。
今日は、ふみと、シーツサイズのタオルを買いに出かけました。
バスタオルより幅があって、タオルケットよりは小さめ。なかなか見つからないものです。


日曜日、朝九時頃の電車は、さすが混んでなくて、ふみのサンダルを脱がして、座席に座らせたのです。
ふみはすぐ外に向かって、ひざまずいて、目に入った風景を、一々実況してくれました。

「工事でしゅよ、ママ」
(はいはい、ふみは工事なら遠くても近くても絶対に見逃さないもんね)

「あ、佐川急便の車だ」
(ふみは佐川急便の制服も車も絶対に見逃さないもんね。たまにクロネコヤマトにも目を留めてあげて)

「川流れてるよママ」
(正確に言うとホリだけどね)

ふみは顔を窓に近づけて、体は電車と一緒にゆらゆら。線路が穏やかで、車両も平穏な時、ふみは自分で体を揺らします。


蛙とてんとう虫の模様のかわいいタオルを買いましたが、やっぱり幅がちょっと狭い気がしますね。

洗面所の石鹸置きも買いたいな。以前のカバさんの面白い石鹸置きは、ふみに玩具にされ、以来、適当なのがなくて、旅行用の石鹸ケースみたいなのを代用してます。
石鹸も、ケースもいつもだらしなく見えて気になってました。


透明な分厚いプラスチックに、爽やかなイチゴ模様の石鹸置きを手に取って、それと同じの歯磨き時用のコップもふみに見せ、
「これはどう?かわいいでしょう」
「かわいいけどぉ〜」(けど?)
「これも!」とふみは同じ柄のシャンプーの入れ物も取って渡した。
「これはいらないよ」
「いるのぉ!」

いらないいらない。だいたいふみはそのプッシュのところを押して遊びたいだけでしょう。
却下されて、ふみご機嫌斜めになり、「抱っこ、ママ抱っこ」と両手をあげて、ひざを屈伸する。
仕方なく抱きあげたら、「ママはふみのママ!」と満足そうな一言、ふみの機嫌は直りました。


ママの買い物に付き合ってくれたから、今度はふみに付き合ってあげる番。
遊具たくさんの遊び場へ。
ふみは相変わらずかわいいキャラクターの遊具よりも、もっぱら列車の運転です。
レバーを掴んで激しく上げて押して、ハンドルを回して(回されて?)、ワイパーを動かし、おまけにベルを鳴らす…
ああ、忙しい忙しい。

そういえばふみは運転席のレバーがとても好きなようです。

ご飯食べながらも、時々フォークを椅子のところに当てて、レバーだと言って握って、前後に動かして遊び始めるのです。



ふみは運転に夢中で、なかなか降りようとしない。
このまま昼食の時間がずれて、昼寝の時間もずれて、おやつの時間も…、あとたいへんだ。
こういう場合はどう説得しても無駄ですけど、
「ふみ、ほら、他のお友達も待ってるよ、あ〜ぼくも早く遊びたいなって。順番っこ順番っこ」
ふみは大抵素直に降りて来ます。
順番っこ。兄弟のいないふみが、譲り合うことを身につけたのは、保育園のおかげだと思っています。大勢のお友達と“順番っこ”を守らないと、集団生活が成り立たないですからね。


トイレに連れて行って、
ふみは必ず水を流したがるのです
「ふみが水流し(す)の〜」
「ここはしなくていいから、これは自動ですから」
「じどう?」
「そう、自動、う〜ん、どういえばいいかな、自分で、水が自分で…」
「勝手に流しの」
「そう!うまい!ふみ、すごいな、よくわかったね」
本当に、感心してしまいました。



ふみと外出の時、やむを得ずほとんど外食になります。
ふみの昼食時間は11半から12時頃ですから、外出先からうちに戻って、ご飯を用意して、食べさせて、片づけて、どうしても間に合わないです。


ふみとレストランで注文したピザを待っています。
窓からベビーカーを押している女性が通りました。
「ふみ、ふみ小さい時ベビーカー乗ってくれなくて、ママとっても困ってましたよ。覚えてます?」
「覚えてましぇん」とふみは天使のような笑顔でした。


ふみが赤ちゃんの時は、ベビーカーもバギーもダメでした。すぐ泣き出したり、暴れたりして、本当に困りました。
スーパーに買い物に行く時も、いつ叫びだすかわからないから、緊張して、いつもびくびくしてました。
買い物の帰りに、あまり泣くので、仕方なく片手で抱っこして、片手でベビーカーを押して歩くのは日常でした。

暴れだして、慌てて抱き上げて、ベビーカーのバランスが崩れて、玉子など割れてあたり散乱して…、泣きたくなる時もよくありました。実際泣いた時も…
子育てってこんなに孤独なこととは。
辛かったです。
長かったです。

目の前の、ピザを美味しそうに食べているふみは、もちろん覚えてないですね、ふみだけではなく、誰も知らないですね。子育ての孤独さは、よその人には。



帰りの電車に、ふみは珍しく眠ってしまいました。今朝ふみは5時頃に起きたんだから、そりゃ眠くなるはずだわ。
眠ってるふみを抱っこして、荷物を腕に下げ、財布を取り出し、駅からタクシーに乗りました。
車内でふみのサンダルを脱がせてカバンに入れ、カバンから家の鍵を探し出し、指にかけて、タクシーから降りる時すでに準備OKです。
ふみをベッドにそっと下ろして、クーラを入れ、ズボンを脱がせ、オムツを換えて、タオルをかけて。
熟睡のふみを眺めながら、やっと座って一息です。
ふみの肘あたり、蚊に刺されたね、今朝出かける前に、虫除け塗るのを忘れたからね。
いけないいけない。