“神父のおじしゃん”

歌が好きなふみは、陽水の「少年時代」も好きみたいで、
「…風アザミ…誰の憧れにサマヨウ」の、風アザミ、サマヨウの言葉が特に気に入り、
「ママ、サマヨウはなに?」
「迷うことだね」
「う〜ん、ショーロンポにしようかな、ミンチカツにしようかな、迷うなあ、ということ?」
はははは、ちょっと違うけど、でも面白すぎる。そうなんだ、ふみはそういうことで迷ったり、悩んだりするんだ、幸せもの!



今日はさらに暖かい。☀25度で夏日だと言われてる。夏と違って、日陰がだいぶ涼しい。
夕べからふみは、明日どこに行こうかと聞かれた時の答えは、ずっと「教会行きたい」でした。


今朝になってもふみの心に変わりはないから、「教会では般若心経を唱えない」との約束をしてもらい、上智大学のそばの大きい教会に向かいました。


日曜の朝は、町は静かなんだ。店舗もほとんど閉まってるし、通行人も少ない。おかげでいつもよりふみの喋ってる内容がはっきりと聞こえる。
「ひゃくとおばんと声かけで、泥棒が嫌う街づくり」とふみは看板を指さして言う。
見てびっくり、たしかにその通りの看板です。
「誰が教えたの?」、ふみが本当に読めたとは思えないんだから。
「パパが」とふみはちょっと得意そう。
なるほどね。泥棒が嫌う街作りか、いいね。


顔見知りの方とすれ違って、挨拶を交わして、通り過ぎたらふみが
「だれ?このおじしゃん」
「前も会ったでしょう?ふみちゃんその時もご挨拶したのよ」
「…少々不気味」
「不気味?!少々?ふみ、不気味というのは、人のことを言わないのよ、失礼になるから。それより、少々不気味って、誰が教えたの?」
「前、お兄ちゃんたち踊ってる時、パパが言った」
(-_-)


✞日曜のミサで、大勢の人が教会がいっぱいになった。


前も思ったけど、教会って(少なくともあそこの教会では)、本当にいい雰囲気な場所ですね。品があって、薄暗さもなく、誰かの所有物じゃないから入りやすくて、変な遠慮がいらないから、気楽だ。


あとは、教会にいらっしゃる方(少なくともあそこでは)、紳士と淑女という感じな方ばかりで。みなさんお上品で、言葉遣いにしろ、佇まいにしろ、身だしなみにしろ、時たま明治の上流社会を題材にする映画のワンシーンを彷彿させる場面もあるほどでございます。


ふみを抱っこして皆さまと一緒に起立して讃美歌を歌う。覚えやすい美しいメロディで、音楽好きなふみを静かにさせた。
二階から聖歌隊の天使のような歌い声とオルガンの響き、ご婦人たちが被ってる白いレース、皆様お祈りをしている時の清らかなお顔、自然に心が柔らかくなる。
「ママ、だれ?」とふみの声が、
前を見たら、穏やかな動きで、神父さんが慈しみ溢れる笑顔で入ってきた。
「神父さんよ」
「神父しゃん?神父のおじしゃん何してるの?」
神父のおじしゃん?違う違う。
「シーだよ、ふみ、静かにしようね」
「うん、般若心経はだめよね」とふみの声は大きい。
だからそれはわざわざ言わなくていいのに。

「ママ、ふみおトイレ行きたい」
「わかった、外に出ようね」
それが聞こえたらしく、前に座った女性が振り向いて、
「そこから行くとおトイレはすぐですよ」と小さく指さして、品のある笑顔で小声で親切に教えてくれました。



教会を出て、土手に登り、そこから、電車が頻繁に通過するのを眺めるのは、ふみが小さい時から大好きなことです。
土手上の風景



電車を眺める




ふみは楽しそうだけど、もう昔ほどの興奮じゃなくなったな。