チョコレート

今朝、ふみがあまりにも言うこと聞かず、叩いてやった。
登園道では、私はほとんど黙っていた。
ふみ時々顔を上げて心にもないことで声をかけてくれて、雰囲気を緩和しようとしてる(ママよりオトナ?)


「ふみ、今日でふみちゃんはもう2歳10ヶ月だよ。なのにあんなことして。ふみ、もうタンポポ組を止めて、つくし組(一歳児)、ひよこ組(0歳児)に行けば」
「ふみちゃん、おりこうしる。ふみちゃんタンポポ組いるの、つくし組行かない、ママ…」


どうしても気分晴れないので、黙ったまま登園道を終えて、保育園の門に着いた。
みんなを迎える園長先生に、ふみ、やはり帽子を取って、90°以上のおじきをして、「おはようございまし」とご挨拶を。


「ふみちゃんバイバイ」という言葉を置いて、振り向きもせず、保育園を後にした。


一日中、ふみのことが気になってた。
悲しくなってるのかな、ふみは。すぐ悲しくなるんだから。


あっという間に、またふみのお迎えの時間になった。
コンビニで、チョコのコーナーをみる。
めったにふみにチョコレートや飴を食べさせてない。コーラなんかは、まだ一回も飲ましたことがない。
ふみが初めてチョコレートを食べたのは、今年の節分、近所の神社の豆まきを見に行ったら、小さい子にお菓子がいっぱい入ってる袋が配られた。
そのなかにチョコがあって、ふみはその駄菓子っぽい“ニセチョコ”をおいしそうに食べてた。
人生の初チョコが、もっと本物のおいしーいチョコじゃなかったのは、ふみのためにちょっと悔しい。


コンビニのチョコ、いろんな種類あるんだね。普段あまり買ったことがない私は、手に持って、結構長い時間研究したうえ、サクサク系の買った。


保育園から出て、日が暮れる前のひんやりした風に吹かれ、私はしゃがんだ。
「ふみ、ママ、話があるんだけど」
「うん。なに?話あるの?」
「ママは今朝ふみちゃんを叩いたね」
「…うん」ふみは私を見ないで遠くを見てる。
「…ごめんね。ふみが悪いけど、ふみちゃんは自分どこが悪いもうわかってるよね?けど、ふみを叩いたママも悪かった。ごめんね」
「うん!」ふみは笑った。笑顔が花のよう。「ママ、ご褒美の抱っこぉ!」
ふみを抱きしめて、ふみは、ほほに音を立てチューをしてくれた。

「ふみ見て、ご褒美の抱っこじゃなくて、お詫びのチョコレート」


チョコを口に入れられたふみは、本当に幸せそう。
「ママ、これなんというもの?」とふみは自分の口に指さす。
「チョコレート」
「はい。わかりました」
ははは、信じられないから確認したいってこと?