ふらふらまで?

「しっかりしないと!」って、つい昨日“誓った”ばかりなのに、今日もまた…


大きい荷物を持って、地下鉄駅へ向かう。
土曜日だから、近所の郵便局はやってなくて、新宿の大きい郵便局に行くしかない。


まだ早いうちだから、資源ゴミの収集車が来てる。ふみはいつものように立ち止まって見る。

「ママ、ママ、運転手のおじしゃん降りたよ、いないよ。どこに行ったの?」

(知らないわよ)「うん、お手紙を出しに行ったね。ポストに」
「お手紙?誰に?」
「うん、奥さんに。おじさんの奥さんは遠いところに住んでるんだ。おじさんは毎日お手紙を出すの。メールは、うん、つまらないじゃない手紙より」
「おじしゃん、おくしゃんにお手紙だしの?なに書いてあるの?」
「うん…元気ですか?今日は寒いけど、僕はいつものようにお仕事をしてるよ。そうだ、今日は一人小さい男の子がずっと僕の働いてるところを見てたよ」
「小さい男の子?」
「うん。毛糸の帽子をかぶって、茶色のコート着て…」
「ふみちゃん?ふみちゃんだね!」
(^_-)



大きい荷物を持って地下鉄駅の長い階段を降りて、さあ、切符を買おうとしたら、
財布がカバンに入ってない!
財布は普段使ってる小さいハンドバッグにある。ふみと出かける時は少し大きめのカバンなんだ。


えええぇぇぇ〜〜〜〜いつも出かける前にチェックするのにぃぃぃ〜


「ふみどうしよう〜…」


結局またふみの手を繋いでうちに戻ることにした。
「ふみ、ごめんね、本当にごめんね、ママバカだね、どうしよう…」
ふみは平淡な顔してる。


寒い中、二往復の道に、ふみは別に文句や愚痴もなかった。
ごめんねと言われるたび、「うん」と返事するだけだった。


えらいね。もしこれが逆なら、私はすごい愚痴を言うでしょうね。


再び駅に向かう時、
「ふみ、お昼何を食べたい?お詫びに、何でもいいよ、好きなもの、ママ何でもごちそうするから」
「うん…ピジャ、ピジャでいいよ」
「わかった」



郵便局であの大きい荷物を出して、デパートに行った。
最上階のペットショップで、ベタの水槽に入れる水草を買うため。
水草を一束買ってから、店員に聞いて、“バルーンモーリー”という小さい熱帯魚を二匹買った。ベタと同じ水槽で飼ってもだいじょうぶだって。
真っ黒の一匹と目の周りだけ黒の白っぽい一匹を。

あの赤いベタは元気だが、やっぱり一人だと寂しいんじゃないかって思う。
新しい友達と仲良くいれればいいね。

店員さんと話している間、ふみは勝手に他の水槽を見回っている。
「ママ見て。これはイモリというのよ。おなかが赤いイモリ」
行ってみたら、名札に確かにそう書いてた。
陸にすむイモリで、形はイモリといっしょ。
「すごいね、ふみ、よく知ってるね」
「パパといっしょに魚の本を読んでた」
「そうか」



一階下のレストラン街に行った。
おいしそうなピザを焼くのが見えるイタリアンの店の外に、すでに長い行列。休日のデパートはこうだね。


店員さんに聞いたら、30分待ちぐらいになると。
「ふみ、違うところにしようか、30分も待つのよ」
「ここがいい、ふみちゃん待つ!」
「お腹が空いてるでしょうに、疲れない?」
「ふみちゃんだいじょうぶ」
「…」


30分近く待って、やっと入った。


美味しいピザを口に入れるふみは、大げさに頭を小刻みに振りながら、
「なんともいえないおいしいね」
「えっ?なんともいえない?あははは」
「うん、パパはおいしい物食べる時こういうよ」
なるほど。
「でもふみよく頑張ったね。いい根性だわ。正直ママは待ちたくなかった、お腹がすいてるし。イヤだった。ふみちゃんは大丈夫だった?」
「うん…うん…、途中、フラフラしたけどね」
(^◇^)
フラフラだって。フラフラまで…



ふみは嬉しそうにピザをたくさん食べた。
ママはふみが食べないピザの耳を(^^)/





夜、残った小麦粉の生地に、ベイキングパウダーを入れ、小豆の餡饅を作った。

生地はやっぱり自分の作ったのがおいしいね。