前髪

どう見てもふみの前髪まだちょっと長いなって、前回、ふみのママによる散髪の様子を思い出して、調子に乗ってふみの前髪を切ることを申し込んでみた。
前回と同じくふみはOKした。
でも前髪なので、前回みたいな仰向きにはいかないから、正面に座ってもらった。


やっぱり人間は調子乗っちゃダメね。ふみの髪、明らかに切りすぎなんだ。


どうしよう。前髪が全体と比べて短すぎで、バランス相当悪い。
考えないようにするわ。一晩眠ったらまた違うでしょう。


朝起きても、奇跡が起きなかった。
短い前髪は、一応揃えてるけど、“_ー”のように微妙にズレて分厚く、セピア写真撮ったら戦時中の子供そのもの。



ダメ。このままじゃダメだ。
私自身の小さい頃、ただのおかっぱ頭でも、人にはわからない微妙なところが、常に悩みの種で、一喜一憂だった。


高島屋のあの子供の美容院に行こう!
けど、きょうは日曜で混むはず、予約もしてないし。
でも行く。早めに行ったらなんとかなるわ。


電車に乗って新宿へ。
「ママ、ふみが切符持つ」
「わかった。ポケットに入れてあげるね」
「ポケットに入れない、持ってる」
ふみは切符を握る。


まもなく新宿。
「ふみ、切符持ってるよね?」
「うん。…、ママ、聞いたらダメでしよ」
「はい。ふみを信じるね」


10時に開く高島屋に、10分ほど前にふみと並んでた。

丁寧なご挨拶をされ、開店。ふみと小走りに9階にある美容室へ。


「予約してないですけど、だいじょうぶですか?」
私のあまりにも切実な気持ちが通じたのでしょうか、店員さんたちお互い顔見合わせたあと、
「いいですよ」と。

やった!

ふみが鏡の前の席に着いた途端、ぞろぞろと親子連れが入って来た。


ふみは、かなりに慣れてる様子で、見たいDVDを注文(もちろん“働く車”)、さっそくカットが始まった。


美容師と話して、私は出てきた。
周りの店に一軒一軒聞いて、探してるしゃぼん玉は、なかった。
理由の一つは、「季節が…」。
そうでしょうね。しゃぼん玉はやっぱり夏のイメージだもんね。


諦めて美容室に戻り、ふみはもうシャワーを済んだところ。

「ふみ君すごいですね。とってもおりこうで、シャワーもおしゃべりしながら全然泣かないですよ。で、“すごいね”とほめたら、“当たり前よ”ってふみ君が、はははは」と美容師さんが。


そうか、当たり前か。へぇ〜


「はい、ふみ君、もう終わったよ。よく頑張ったね」と美容師が。
「あ〜さっぱりした」との一言のふみは堂々としてる感じ。


散髪の終始号泣してたあの頃のふみはどこに行ったのでしょう。





「ふみ、ごめんね。しゃぼん玉、なかった、もうちょっと暖かかったら出てくるんだって」
「わかった」
ふみは美容室から出て、玩具売り場へ直行。しゃぼん玉、もうどうでもよかったみたい。







夕食後、デザートはパパが作ったプリン。結構な味でした。