糠漬け

保育園の玄関で、K君が自分のロッカーに、自分のスニーカーと大人女性のハイヒールを、無理やりに入れようにしている。
K君のママはその後ろで立って、ちょっと苦笑いしながらそれを見ている。
K君のママの靴なんだ。

ハイヒールをほとんど履かないわたしにも、結構高級なハイヒールだとわかるほどなきれいな靴を、K君は無理やりに子供用の狭いロッカーに入れてる。
並べて入れるのは断念したみたいで、ハイヒールの上に男の子だからこその薄汚いスニーカーを乗せて、なんとかロッカーに入れた。


見入ったわたしに気づき、K君のママは、やはりちょっと苦笑いして、
「こうしたら私がお仕事に行かないと思ってるでしょうね」と。


K君は私に、「ママは背中に湿布貼ってるよ」と言った。
「もう、そんなこと」と、細身スーツ姿のK君のママはさらに苦笑い。


K君は、丸い膨らんだほっぺのわりと体が大きい子。無表情の時が多く、少し乱暴そうなところもあるけど、わたしはそのほっぺがかわいくて、嫌がられてもわたしはよくK君のほっぺを触るのである。
そのうちにK君も慣れたみたいで、たまに笑顔も見せてくれる。
するとわたしはさらに調子に乗って、「かわいいぃ〜」と言って両手でK君のほっぺを揉み揉み、K君はまもなくそれも慣れたようす。へへへ


ある時、朝の保育園で、K君は、
「ね、ふみ君のママ、玄関まで送るよ」と言って前に歩きだす。
?、あ、はい。その後ろに着いてわたしは恐縮ながら歩く。
玄関に着いたら、K君は、「バイバイ」とあっさり一言残して戻る。


ある日、部屋から出ようとしたわたしは、K君に呼び止められた。
「ね、ふみ君のママ、ふみ君のパパってどんな人?」
「え?そうね、メガネを掛けてる人。K君のパパは?」(そういえばまだ見かけたことがないね)
「知らない」
「…、メガネかけてなあい?」
「知らない」
「…、あ、K君の上履きに新幹線があるんだ、かっこいい〜 」



K君が笑う時は、別人のように甘〜い顔なんだ。


4日間、抗生剤を飲んで、熱は上がらなかったが、扁桃腺炎は一向によくなる気配がない。
今日は休みにして、病院に行って点滴を受けてきた。
30分仰向きになって点滴を受け、パーテーションの向こうの先生の診察を聞きながら。


三人目に入ってきた女性、声を聞くと、5、60代かな、なかなかたいへんな人だった。

「先生、私はね、前の鼻を手術をしてくれたあの先生以外はね、私はあまり信用しません。だって私は自分の病気を一番はっきりわかってるから。…。そうそう、頭痛、頭が痛いの、でもこれはわかってるわ、これは私はね、前からね漢方を飲んでてね、…、そうそう、この理由もわかる、アレルギーからだと思うわ、…、いや、だから、この薬は要らないの、わたしに合わないだとわかってるから、…、あ、そう、じゃ、こういうことですね?つまり、今回は、要は、…、これからは、こういうことを注意すればいいんですね?つまり…」


まっ、よくご存じですこと。

本当にいろんな人おりますね。知らないと思われるのが、とても苦痛でしょうかね。



ふみを迎えに行って、用事があるから一緒に郵便局へ。
ふみに点滴の跡を見せた。
ふみは、「だいじょうぶ?ママ、注射?だいじょうぶよ。う…ん、アイスクリームを食べたらよくなるよ」と、顔中期待に溢れさせ、わたしを仰ぎ見る。

(-_-)




ずっと糠漬けに憧れていたパパは、とうとうネット注文して、冷蔵庫で糠漬けできるセットを購入。

夕べさっそく漬けて、今日の夕食に頂いた。



悪くない悪くない。