ハエ

仕事場は工事のため、窓や扉の開け締めが多いせいか、どこかから大きな蠅が入ってきたのです。
今時、こういう蠅は、めったに遭遇できないんじゃないかね。

動物の死体を愉快に飛び回るというイメージしかない、巨大な蠅。

ヤツは窓の枠に止まって、戦闘に向かう前の兵士のように、やや興奮気味に前足を止めずに擦る。


地味なつばさを時おり上下させ、気合いを入れる。


調子乗り過ぎ!
思うがままになると勘違いしてるわコイツ。



思わず手元に置いてある雑誌を握りしめ、ヤツの複眼を避けるように、身を潜めて、ヤツのいる戦壕の真下に移動し、奇襲した。


けど、思ったより雑誌は軟らかい、思ったよりヤツの止まる場所が高い。
一発でこの戦争を終わらせるとのわたしの予想からの「エイっ」というわたしのかけ声にふさわしくなく、ヤツに優しく触れた程度で終わり、わたしの負けだった。


ヤツは怒った。

青緑に光る小型戦闘機は、方向性を失ったように、四方八方へ猛スピードで突撃する。


テロにあったものは、本能的にこの行動を取るのでしょう。

戦闘機はだんだん冷静さを取り戻しているようだ。明らかにわたしを標的にしている。

戦闘機が向かって来るたび、わたしは頭に雑誌を載せて(あれはヤツを叩いた雑誌なんだ、ヤツの複眼の上の一本か二本の眉毛が付着しているかもしれない)、体を低くする。


いつまでもこの守りの体勢じゃダメだ、わたしも攻撃の策を出すんだ!と自分に言い聞かせ、手を伸ばして、デスクの上にあるノートを取った(正確に言うと、ノートではなく、クリップで留められているメモ用紙の束だ)。


わたしは一刻も止まらぬ攻撃をしてくる戦闘機に向かって、そのノートを発射した。


わたしはしゃがんだ。

何秒間の静寂の中、メモ用紙が一枚、二枚…と、空中からひらひらと舞い落ちてきた。


メモ用紙が散らばったことがわかったが、肝心な小型戦闘機は?まさか的中?!
イェ〜
と思った途端に、大型旅客機かと思うほどの音を立てて、青緑の光が、まぶしく目の前を通過。


部屋の電気を消し、わたしは洗面所へ移動。

鏡の中の髪が乱れているわたしは、狼狽そのものでした。



中国古代の話だけど、こうろぎを捕まえようと、ムキになった人が、結局お城を崩してしまった。
なんだか、気持ちが、わかるような気がする。

ある場合、止まるより、進めたほうがラクだと、人間はそう勘違いする。


髪を整えて帰って来て、蠅なんで入って来たんでしょうねと言ったら、
同僚の女性は、
「あれは蠅だったの?!一瞬しか見えてないから、セミか何かと思ったわ」


いいえあれは巨大な蠅に違いない。セミの季節また来てないし、それにセミはヤツより平和を愛するはずなんだ。





ある方からスイカを頂いた。
我が家は大の西瓜好き。


ふるさとのスイカは、大きくて甘くて、本当においしい。しかも安い。
最初、日本のスーパーで一切れ一切れで売っているスイカを見て、しばらく意味がわからなかった。それにその値段にさらに驚いて(=_=)




今晩、ヨガ教室をやっている建物の最上階から見た夜景。


そして、帰り道のこの新月。今日は旧暦の2日だもんね。