寝ているせみ

今日は、やっと晴れ間が見えた。むしむしするけど。


ふみをお迎えして、その足で新宿へ。ふみは珍しく「お腹すいた、お腹すいた」と何回も言う。
連絡帳を取り出して見てみたら、なんと、この人、昼ごはん食べてなかった。

昼は、ふみの嫌いなチャーハンで、だからどう誘われても拒否しつつ、お茶とデザートのメロンしか口にしなかったという。


チャーハンね、大抵の子供は好きなんじゃないかね。
これも食べないあれも食べない、仙人になるつもりなのかね。


まあ、こればかりは強制できないから。


ふみと歩いてる時、急にすぐ近くから蝉の鳴声が…、みんみんみん〜
あまりにも大きく、一瞬蝉が自分の肩にでもとまってるんじゃないかって思うほどだった。


立ち止まって見ると、あなたなのかぁ〜、みんみんみん、


セミはしばらく鳴くと、ふみとわたしの凝視に耐えられなくなったか、サッと消えた。
「逃げた逃げた、せみ逃げたよ、ふみちゃん見た、ママも見えた?」とふみは少々興奮気味。


また少し歩くと、道端でひっくり返って死んでいる蝉が見えた。死んだ蝉を見かけるのは、もう何回目なんだ。
セミって、本当に命が短いね。


「死んだね」とわたしは言うと、
ふみは決まって、「せみは寝てるだけだよ」と言うのだ。

また少し歩くと、わたしは「あそこで寝ると危ないのに」と言うと、
「あのせみは、もう起きて飛んだよ」と言った。


そっか、そうでしょうね。すくなくとも魂はそうなってると思うわ。

夕方の空、晩夏の空。

もう晩夏でしょう、だって7日はもう立秋だもの、だから蝉たちも死んでゆくんだね。
それからの暑さも“残暑”と言う。


新宿の書店で、わたしの本を見つけた。