まんまるの月

Nちゃんは、2歳の時からふみと同じ組です、二人の月齢も一ヶ月しかかわらない。

この頃Nちゃんとふみを見ていると、やっぱり女の子は男の子と違うなって感じる。特に世話焼きのNちゃん、ふみのものを片付けたりして、けどふみはありがたく思うどころか、いつもうっとうしがってる。


昨日お迎えに行くとき、誰もいない廊下で、Nちゃん一人、壁の、大きい鏡の前に立って、鏡の中の自分に向かって、ほほえんだり、何かの仕草を作ったり、声だしてしゃべったり、どうやらかわいいく見せるための練習のようだ。


あまりにも夢中で、いつも人懐こく挨拶してくるのに、わたしがそばに通るのも全く気付かなかった。


ふみと部屋から出てきても、Nちゃんはまだ鏡の前に立って、スカートの裾を持って、お姫様が王子様と初対面するように、首を傾け、ご挨拶を申し上げてる。


へぇ〜と感心して見てたけど、ふみは静かだなと気づいて見てみたら、ふみは、顔中“うっとうしい”と書いて、Nちゃんを睨んでる。


これは危ないと思った瞬間、ふみすでに走り出した。
あっという間にNちゃんのところに着いて、Nちゃんの肩を押した。


あちゃー、わたしもあわてて走って行って、ふみは何事もないようにリュックをしょって歩き出す。
Nちゃんは泣きだそうになって、「いやだ、痛いよ、やめて〜」と。


「ふみ、なにするの、ダメじゃないお友達を押したりして、Nちゃんだいじょうぶ?ごめんね、まだ痛い?」とわたしは言いながらNちゃんの肩を軽く揉んであげる。


Nちゃんの機嫌はすぐ直って、玄関までお見送りまでしてくれた。


夜、パパ、ママ順番にふみを説教、Nちゃん含め、女の子を押したりするのはダメ、かっこう悪い、など。
ふみは「はいっ、わかったぁ〜」と、その返事はいかにも心がない。


けさ、黒い生地の上に白い星がいっぱいキラキラするワンピースを着ているNちゃんは、いつものように満面の笑みで挨拶をしてくれた。


「ふみ君、コップをちゃんと置いてね」とNちゃんが言った途端、ふみは険しい顔をNちゃんに見せる。
「いやだ。ふみ君こわいよ、いつもふみ君こわいよ」とNちゃんまた泣きそう。

「NちゃんNちゃん、ふみはね、実はNちゃんのこと好きだよ」とわたしはあわてて言う、
Nちゃんはそれを聞いて、すぐ醒めた顔になって、
「違うもん、知ってるよ、ふみ君はさぁ〜、ふみ君、H君が好きでしょう?」
「うん!」とふみはあっさりと認める。

「ほら、知ってるよ。ふみ君はH君が好きなの」


こりゃいかん、「Nちゃん、今日の服とってもかわいいね」とわたしは。


Nちゃんの表情は和らげた、「えぇ?でもNちゃんは昨日もこれを着てたよ」と。


あれ?違う違う、昨日鏡の前に立ってる時、確かにピンクっぽいスカートだったから、「昨日のピンクのスカートもかわいいけど、今日のはとってもかわいいね」

Nちゃん、満足そうな顔を見せ、去った。


うわ〜ふぅー、冷や汗をかくわ。



夕方、病院に胃の検査の結果を聞きに行った。


びらんの組織は、悪性でもなんでもなかった。
もう少し深ければ、潰瘍と呼ぶけど。今の段階まだだいじょうぶ。
いろいろ気を付けなきゃならないことがあって、辛いもの、とくに激辛は、おそらくもう二度と食べられなくなったことは、ちょっと残念だな〜
あと炭酸もダメになった。まあ、別にいいけど。


血液検査の結果は、大いに喜ぶべしである。全部正常。
ただ貧血気味で、来週、鉄分注射を受けに行くことになってる。


帰って来たら、近所の花火大会の時間になった。
パパとふみは観に行った。わたしは疲れたからよした。


花火を打ち上げる音を聞きながら、わたしはベランダから真ん丸の月を観てました。

今日は暦の16日。月はまんまるやな〜


近くのお寺の本堂に映ってる花火の光。