おいしそうなパン

一日ぶりに外に出た。
冷たい空気で頭もいくらかすっきりする。
ふみと駅に向かってゆっくりと歩く。
「ママ、ママ」
「なに?」
「ぼくね、あの灯油の車の運転手さんになるの」
「へぇ〜、白バイはやめた?あ、その前の新聞配達も」
「灯油のおじさんになるの!」

うちはガス・ファンヒーターを使っていて、灯油の配達のお世話になったことがない、けどふみは、ずっと前から灯油配達の車を認識して、好きなようだ。
たぶん、いつも楽しい音楽が流れているからでしょう。

ふみの夢は日によって変わってる。
わたし小さい時も同じだった。
夢は多すぎて数えきれないのだが、中に、裁縫がとっても上手なおばさんのいるお洋服を作るところで働きたいという発表は、今でもはっきりと覚えてる。
あれは本気なんだ。


しかしふみは口が止まらないなぁー。
まだ赤ちゃんの頃、ふみを抱っこして外を歩いてたら、見知らぬおばさまが声をかけてくれて、何歳ですか?もう話せますか?と。
いいえ、まだ喋れないんですと答えたら、
「あ〜喋れない時は早く喋れるようにと思うでしょうけど、喋れるようになったら、黙ってほしいって、大人はまた思いますよ…」
そのおばさま、たしかにそうおっしゃった。



これは、見た目も、香りも、触り心地も、おいしそうなパン。


ストラップです。パパの、ふみへのプレゼントです。
本当によくできていて、「ふみ、ぜったい口に入れちゃだめよ」と言うわたしだが、口に入れてみたいという衝動を一生懸命抑えてるわ。