就寝まえの時間

部屋を暗くして、ふみを寝かします。

ふみは「ママあれ歌って。あのホンダァンロンの歌を」
紅灯籠ね、中国ドラマ「胭脂雪」の主題歌。
口ずさんでいるうちに、ふみもその歌が好きになったみたい。メロディは単純で易しい歌なんだ。

「ママ、教えてあげようかぁー、今日ね、練習したの。ふみとK君がね、お馬になって、U君がトラ、Hちゃんが鳥で、Sちゃんはウサギ…」
来月頭に、保育園の「大きくなった会」という発表会があります。
今週から練習、それから総練習があるみたいです。
ふみたちも、なにかのセリフを与えられて、芝居でもあるのかしら。

寝る前のふみの頭の中は、走馬灯の状態じゃないかな、そんな気がする。

急にずっと前のある場面を再現したり、あ〜、そういえばそうだったなと思った途端、ふみはまた全然違う時の別の出来事を思い出して話す。
あっ、こう言ってみると、走馬灯ではなく、時間と空間を自由に飛び渡っているのでしょう。


「ママ、パパはおもしろいね。寝てるのに、アイスをあげると、急に食べて、また寝たね。おかしいね、はははは」
あ〜、伊香保行きの特急列車の中ね。車内販売のアイスクリームを買って、
パパは居眠りのふりをして、アイスが口元に運ばれた時、急に起きて、パクっと食べて、またすぐ“眠る”。
それが大うけのふみでした。

しかしなんで今それを思い出したのかしら。

「パパおもしろいね。不思議な人だねパパは」とふみは言った。

不思議な人かぁー、笑えた。


パティ・ペイジの歌、いいな〜。
こころが溶けてしまいそうな声なのね、彼女の歌声は。
いくら時代が過ぎてしまっていても、こういう歌は時間と空間を超えるものですね。