ふみのズボンを買わなきゃならない。短くなったか、ぼろぼろになったか。
やはりジーンズがいいね、丈夫で汚れも目立たない。

ズボンを選んでる時、ふみは、「ママ、ここで遊んでいい?」と聞いてきて、視野範囲の子供遊び場なんだから、全然OK。
ズボンを選びながら、ふみをちらちら見て、どうやら店員のお兄さんが、しゃがんでふみと何かを話してる。
よくある光景だから、わたしも気にしなかった。どうせ「何歳?」「4歳」「幼稚園に行ってるの?」「幼稚園じゃないよ、保育園」、お店でふみはよく店員さんと、このようなやりとりがあるんだ。


3本のズボンを決定、ふみのところに行って、見た光景は、
子供コーナーのテーブルのところにあるべきの椅子4、5脚が、全部移動され鏡の前にある。女の子は絵本を持って座って読もうとするが、椅子がない。困った顔の女の子の視線の先は、…ふみです。

ふみは、すべての椅子を鏡の前まで運んで、繋げて、「電車、連結してんの」と一番前の椅子に跨って“運転”している。

さっきの店員さんが、しゃがんでのやりとりは、ふみを説得してたに違いない(後でふみに確認したところ、“一人で全部持ってきてはダメでしょうとお兄さんが言った”と)


とんでもないですね、ふみ。あなたは昨日に引き続き、どんどん調子のるね。
怒りと同時に、自分の昨日のふみの言動を、少しも叱ってやらなかったことを悔やんだ。

いつもこうだ。そのつどそのつど話してあげないと、まだ分別つかないふみは、自らの反省はありえない。これでいいんだと思って、必ずって言っていいほど同じようなことを繰り返して、あるいはそれを上回るようなことを平気でするのだ。


ふみは昨日、先生の言うこと少しも聞かないし、叱って来ないをいいことにして、走り回っていろんな生徒さんにご迷惑をかけた(昨日、先生に謝ってから、わたしは大人の生徒さんたちにも謝った、“いいんですよ、楽しかったから”という言葉が帰ってきたけど、それを本気にする親ばかではないから)、帰って来て、ふみにじっくり話すべきだった、そうしたらふみは今日こんなに度を超えたことができるわけがないのだ。

この子、人に迷惑をかけることに、平気になってきてる、とんでもないわ。


椅子を素早く返し、女の子にあやまって、店員さんのお兄さんにあやまって、ふみと出てきた。

どう言ったらいいのかな、言うこともない基本に過ぎることが、なんでふみはわからなくなったのか。柔道をやって、保育園の発表会の舞台にも立って、一回りニ回り肝っ玉が大きくなったのかな。


黙ってエスカレーターで降りるわたしを見て、ふみはにこにこ、全然何事もないようだ。

観葉植物のお店が目に入った。光ってるような緑を見て、心がスッとなりそうで、思わず入った。

ふみは、最初はちょっと嫌がってたが、すぐ鉢植えの下に溜まってる水に惹かれて、近づいて行った。
これはいかん!この人、また何かをやりそうだ、即、店の外に連れ出した。
自然にため息ついた、「女の子だったらいいのにね、お買い物やこういうお店もきっと一緒に付き合ってくれるしね。今みたいに、わたし自分のお買い物がほとんどできないわ」と独り言のように言ってしまった。

そばに歩いてふみはこの時、
「仕方がないでしょう!僕は女の子じゃあるまいし。これは運命でしょう、しょうがないでしょう!」と言った。

…?! 笑いを我慢できなくて、声をだした笑った。

「ふみ、確かにふみは男の子というのは運命でしょうけど、落ち着きがない、言うこと聞かない、人に平気で迷惑をかける、礼儀もわからない、こんな子、当たるのもママの運命なの?冗談じゃないよ、自分が努力しないことを運命で片付けるんじゃないよ」

ふみは何も言わない、しばらくして、「なんでもウンメイだよ」と言った。

運命の意味、ちゃんとわかって言ってるのかい?たまたまでしょう、うん。

それとも夢の中でどれか仙人さんが出てきたとか。


昨日の教訓があって、問題はそのつどそのつど解決するように、
夜、ふみを正坐させ、今日のお店での人にご迷惑かけたことを、しかってやった(ちなみに我が家の怒る役もわたくしである)。
ふみの態度を見て、あまり真剣に聞いてるに見えないけどな、これ以上もできないし、しょうがないや。



今朝、ふみと両国の江戸博物館で、モンゴル至宝展を観てきた。


「あ、馬乗ってる少年だ」
「少年?ひげ生えてるじゃない、よく見て」
「あ、本当だ」
入口のところの、内モンゴル博物館のチンギスハンの銅像だった。



う…ん、この展はイマイチという感想だった。
中国、内モンゴルの一級文物の数々、だが、印象に残るものは正直あまりなかった。
この前観たチベット展とは比べられない気がする。わたしだけだと思うんですけど。

中国の物なので、説明は、当然中国語(モンゴル語をではなく)を訳したものだったのが、違和感を感じると同時に、悲しかった。

たとえば、ホロールというモンゴルの保存食品として各家庭にある乳製品の干し物を、
「奶豆腐」と表示してあった。
思い切り中国語の名称じゃないか。驚きました。


いろんな馬具も展示してた。
ふみは、覊(おもがい)をしてない野馬だと思った。



椎名さんの個展は、再来週から開かれる。
前日にカフェでオープニングパーティをやるというので、その案内が来ました。
ちょうど広州に行っている間で、出席ができません。
残念でならないです。