勝負

昨日ふみは保育園に行った。
患部のふくらはぎは、ちゃんとガーゼで巻いて、皮膚科の先生の許可もあったので、園側は別になんにも言わなかった。


さっそくふみは今日音楽教室の次に、柔道教室に通いました。

夕方の柔道教室のため、昼寝も頑張って眠ってくれた。一時間ほど。まだ眠っているふみに、「柔道の時間だよ〜」と言うと、ゴロンと起きてしまった。明らかにまだ眠そうなのに。

「ママ、ぼくね、Sちゃんと遊べるから柔道教室行ってるんだよ」とふみが。

ほほほ、そうじゃないかと思ったよ。少なくとも、Sちゃんがいるから、ふみは、とっても楽しそうに柔道を続けている。
Sちゃん、東大希望しないのかな。ぜひぜひ。


道教室に行く途中、
今日は、ふざけちゃダメよ、と念入りにふみに言う。

「わかった。ぼく今日から、先生のことを少しこわくなるから、少しね。ママ、ママもお金払って柔道やれば、そうしたら落ち着きが出るよ」
噴き出してしまった。落ち着き、ママは充分あるわよ。
「ママはダンスがいいの」。


昨日、ダンス教室に行ってきました。

ワルツ、簡単そうに見えて難しい。
うちで一人でやろうと、なんと、なんもできなくなってる。
ナチュナルターン、リバースターン、…

少し落ち込んでしまった。やめようかな、とすら少し考えた。


でも昨日は、教室に立って、先生と踊りだすと、また自然にできるようになりました。
まだ、たどたどしいけど、一周ノーミスで踊れた。
うれしい。
ダンスって、やっぱり楽しい。わたし、ダンスが好き。


ワルツを、もっともっと上手に、もっともっときれいに、しあわせに踊れたらと願ってる。



今日の柔道教室でのふみは、前回のような無意味に走り回るのは、だいぶ減りました。
ただ先生のほうをあまり見てない、だからいろんな動作は合ってない。


今日は前回の優しそうな50代の先生ではなく、厳しそうな30代のがっちりしてる男の先生。
ふみに着替えやってあげようとした時、先生はふみを呼んで、やってあげると。

脱がされた服をふみは、「ママ、これ持ってぇ」とわたしに渡そうとしたが、
先生は低い声で、「持ってとか、やって、とかじゃなくて、やって下さい、でしょう」とふみに言った。


わややや、嬉しい!もっともっと指導してください!
保育園は、あまり言葉遣いを指導していないように感じる。教育方針なのかどうかわからないが。
わたしは、やんちゃでもなんでも、言葉遣いがちゃんとしていれば、人間はそれほどズレないと思っている。


ふみの言葉遣いを、一々指摘してるけど、効果はイマイチ。
柔道の先生に言われるなら、なにより助かる、なにより効くと思うわ。


今日のふみも、Sちゃんとくっついてた。ふたりだけ4歳だからね。


後半の終わりに近いころ、なんとかのわざの練習だけど、二人一組で、お互い交代で相手を押さえて、押さえられる方は一生懸命逃げ出そうとする。


Sちゃんに押さえられるふみは、まったく動けない。Sちゃんは、ふみより大きいのもあるが、ふみ、あまりやっている意味がわかってないように見えた。


交代して、ふみがSちゃんを押さえる時、あっという間に、Sちゃんは抜け出してしまった。


何秒間、ふみは分けわからなかったみたい。



「やった、Sちゃん、逃げたよ」と、Sちゃんが小さいジャンプをしながら先生に報告して、
ふみは、やっと状況を読めた。


ふみは、わたしのほうを振り向く。


よく見たら、ふみは涙を抑えてることがわかった。


ふみは、わたしのところまで走ってきた。
「いやだ、ママなんか大嫌い、いやだ、あっち行って」と、わたしを叩きながら、わんわん泣いた。


カバンからハンカチを取り出して、ふみの涙を拭くが、汚い鼻水がいっぱいついた。
いやだ、わりと気にいったハンカチなのに、こりゃ捨てなきゃならないわ。



ふみは、わんわん泣いて、Sちゃんはびっくりして、ふみをぼーっと見る。


先生はこっちに来て、
「どうした?いいから、だいじょうぶよ、こっち来て」
「いやだ!ママがいい、ママがいい、あ"〜〜〜」
「そうか、ママがいいっか、じゃ、しばらくママのところにいて」と、先生は笑って戻った。



ふみは、わたしに抱っこされて壁を見詰める。
「ふみ、意地張らないで、みんなを見たら、ほらまた違うことを教えてるよ、今見ないと、今度またできなくなるから」

「いやだ見ない!」、ふみはまだしくしくする。

「あら、今がチャンス、ほら誰もこっちを見てないから、ふみ、チャンスだよ、みんなを見て」


ふみ、少し顔を斜めにして、目尻から場内を覗く。


よほど悔しかったね、Sちゃんに負けて。


「今日のこと、パパに言わないでね」とふみは、しくしくして言った。


今日の練習は終わり、最後みんな「気をつけ」の時、ふみは頑張って列に戻った。
そして、何事もないように、Sちゃんと喋ったりした。

よし!



「ね、ふみ君のママ、今日もSちゃんも補助輪なしで乗ってきたよ、ね、見せるから、みてみて」とヘルメットをかぶってるSちゃんは言った。
「S、いいから」と、Sのお父さんは苦笑する。

遠く行ってしまったSちゃんを見送りして、ふみは、
「パパに言って、早く、ぼくにも自転車買って、今からやりたい」


「暖かくなってからね。ね、ふみ、Sちゃんは、いきなりこんなに自転車が上手になったんじゃないよ、Sちゃんは、とっても根性のある子なんだよ。黙々と一生懸命練習したから、自転車も上手、柔道も上手。ふみは、勝つところばかり見て、それまでの努力を見ないとダメだよ」

ふみは黙ってる。耳に入ったのかな。





今朝、音楽教室前に入った喫茶店で、主人を待つこのラブラドール犬が、おとなしく外にいた。

かわいい。
ふみと、そのわんこの話をしていたら、飼い主の韓国語でお喋りしている大きい二重の女性がふみに、「かわいいでしょう、とってもおりこうだよ。あなたもかわいいね。あら、すごい眉毛だね」


ふみの眉毛のこと、広州でも知らない人から言われた。

「ふみ、ふみの運勢はこの眉毛にあるから、将来、多少の手入れはママは言わないけど、絶対剃っちゃダメよ、いい運がなくなるから」
いつもふみに言い聞かせてる。
これは本当。風水的にそういうから。


茶店に出る時ふみは、そのおとなしいわんこをやさしく撫で、それまではよかったが、
頭の短い毛を引っ張ろうとした。即その場から連行。