ネックレス

今朝、保育園にいきたくな〜い、とふみは言いだして、
なにを言ってんの、保育園に行くの誰より楽しそうなくせにね。


登園して、週明けということで、いろいろ仕度がある。
「ふみ、靴、お願い」
「待っててね、僕、帰ってくるまで行かないで」、ふみは保育園用外靴を外の棚に置きに行く。

この保育園用の外靴、毎週末に、返されてくる時、これでもかこれでもかと砂が出てくる出てくる。


すぐ戻ってきたふみは、わたしを見て、「よかった」と。
「ママもう行ったと思った?」


ふみは玄関までお見送り。玄関に着いたら、なかなかわたしの手を離そうとしない。
玄関で立ってる副園長先生がにこにこと、「あれ?ふみ君、もうばら組だもんね、もうママとバイバイできるんじゃなかった?」
「だってママがいいんだもん」
「それはみんながママはいいけど、でもふみ君はもう…、あ、Nちゃん、おはようございます」

副園長先生がほかの登園した園児と挨拶をしている間、ふみはずっとわたしの手を握って、「いやだ、いやだ、いやなの」


副園長先生また来て、「ふみ君、こうしよう、先生は玄関の窓を開けるから、そうしたらふみ君はママが見えるから、ね?」


やっと出て来た。横の道に入ると、玄関の窓がある。
副園長先生は本当に窓を開けてくれて、ふみの笑顔が見えた。
「ママ行かないで、もっといて」
「ママ今度お部屋の網戸に行くから、ふみさきにお部屋に戻って」

ふみはお部屋に向かって走って行った。

早足で前へ進む、すると公園に、ふみたちの部屋の網戸が見える。
ふみはもう網戸の前に立ってた。「ママ、こっち、いるよ」ふみは嬉しそうに手を振る。


手を振り返す、振り向きながら、わたしは手を振り返す。
こんな光景、初めてじゃない、もう数えきれないほど。けどわたしは、そのたびに、胸が熱くなる。目がしらが熱くなる時も。


慌ててイヤホンを耳に当て、音楽を聞きながらわたしは前へ進む。



夕方、パパと相撲を取るふみ。ふみが勝った時、パパは即記者に変身、“優勝インタビュー”を行なう。

「優勝、おめでとうございます」
「はい、ありがとうございます、はい」
「賞金は、なにに使いますか?」
「そうですね、パパとママに、はい」
「なにを買ってあげるんですか?」
「ママには、ネックレス、パパには、本。はい。やっぱり女の人は、ネックレスですね、はい」

ふきだしてしまった。
よぉーみてはるな〜