そろそろ梅雨入り

Nさんの法要、親族しか来てほしくないとのことで、参加することができなかったのです。


法要が終って何日も経って、Nさんのお墓参りをしたいと思っているが、一人じゃ、なかなか足が踏み出せないわたし。


豪快な性格のMさんを誘って、わたしはやっとNさんのお墓の前に立ちました。


「この写真、違うんじゃねかよ、おい」Mさんはお墓の前であろうか、どこであろうか、相変わらず大きな声です。

「これ、だいぶ前のだべ?え?こんな顔?もっときれいな、垢抜けた顔だったよな、な?」Mさん、笑い声さえ混じって写真を眺める。


写真のNさん、硬い表情してる。
証明写真を引き伸ばしたような、何にも伝わってこない顔をしてる。


笑うと口元がとても上品で、また人の話しを聞く時、真剣な目をするNさんだが、写真は別人みたい。


「にこにこしてるもんな、いつもな、きれいでな、垢抜けた感じでな、な?」Mさんの大きな声で、わたしは自分またぼーっとしてしまったと気づき、手を合わせます。


「ね、一人で来るの怖いんだべ、え?知ってるよー、ヘッへッヘ、Nさんみたいな孤独な人がよぉ、誰かがお墓参り来てくれると嬉しくてよぉ、待って〜、もう少しいて〜、帰らないで〜って、後ろから衿を引っ張ってくるんじゃねえかって思って、怖いんだろう、え?ハッハッハ…」Mさん、言いながら自分の言葉に大ウケする。


Mさんにお礼を言った。
おかげさまで、Nさんのお墓参りができて、やっと少しホッとした気持ちになれました。


「死んだ人に対して、供養するのが一番。供養するしかないよ。クヨクヨしたってしょうがねんだよ。お線香立てて、手を合わて、お経を唱えて、こうするしかねんだよ、死んだ人に対しては」Mさんは真面目な顔になって、独り言のようにつぶやいた。


さすがそろそろ梅雨入り、空気中の湿度がだいぶ上がってきて、ひんやりしたりもしますが、じめじめしてきた。
小雨も降ったりやんだりして、
世の中にどんな出来事があっても、季節の移り変わりは、止まることはないのでしょう。