ザリガニ
保育園から、ふみの念願のザリガニを、頂いて来ました。
パパが飼育ケースを買ってきて、それまで牛乳パックに入ってたザリガニを入れ換えたら、
「あ〜広いなってザリガニは言ってる?」ザリガニより、ふみのほうが嬉しくてたまらないようだ。
ふみは懐中電灯を取り出してザリガニを照らす。
照らされたザリガニ君は、伊勢海老かと思わせる立派な風貌だ。
餌をやったり、パパと公園の水路から地下水を汲んで来たり、ふみは懸命に世話をしてた。
「ふみ、絶対にザリガニの水をこぼしちゃだめよ、生臭いから、ママはいやよ、絶対ね」
掃除機をかけながら、そうふみに念を押す。
「は〜い」ふみのとってもいい返事。
掃除機をかけ終って、何か物音がするなと見てみたら、慌ててティッシュを何枚も取っているふみがいた。
ザリガニケースの水をこぼした。
…
あれだけ言ったのに、なにをしてくれてるの!
ザリガニの水を机にこぼすなんて、最悪!
ザリガニ君は機嫌よくケースを叩いて、ガサガサの音を出す。
わたしは、この生臭いザリガニの水が、生理的に受付けられない。
「選んで。ママ出ていくか、ザリガニに出てもらうか」わたしは自分の呼吸の起伏が激しくなってることを感じる。
「いやだ、どっちもいや」ふみは泣いた。
「そんなのないよ、選んで。あ、わかった、ザリガニが大事なのね、ママが出ていくから」
「ママが大事、ふみママが好き、出ていかないで、ザリガニも出て行かない、いやだ、選べない。もうこぼさないから、ふみ、ちゃんと拭くから」、ふみはベソかきながら必死に訴える。
選べないか―
疲れた〜
こんなの飼うんじゃなかった。生き物だから、手間かかるし、気掛かりになるし、心配するし、いつかお別れしなきゃならないし、
安易に飼うんじゃなかったわ。
一日の蒸し暑さ、プラス生臭い水の件で、
本当に疲れ切って、無言になったわたし。
「ママ、ママ、この髪のこれ、かわいいね」
「このお花の服きれいね、いつからあったの?」
ふみは、わたしの機嫌を取ろうと頑張ってる。
最近のふみ、よくこの手を使う。
きれい、かわいいと褒められると、ママはなんだかんだって言って、実は、ばかみたいに喜ぶんだとわかってるでしょうね。
そう観察されてるわたし、情けない。
寝る前に、ふみ、またザリガニのケースまで行って、
「ザリガニ君、死なないでね」と声をかける。
ザリガニ君に負けそうなママです。
ザリガニだけじゃなく、きっとウルトラマンにも、なんとかレンジャーにも負けてるに違いない。
そのうち、お友達にも、恋人にも、負けるのは親の宿命でしょうね。
昨日は夏至、一年の半分が過ぎ、
これからまた日が短くなってきますね。