しつこい熱

ふみの熱はなかなか下がらなくて、おまけにひどい咳が出てきて、困りました。もう丸二日間過ぎたというのにね。


今日は連れて小児科に行かないと。


熱プラスあまり食べ物が入らないため、ふみの体力はかなり奪われてます。
この蒸し暑さの中、いくら小児科がご近所にあるにしても、歩いて行くのは、きびしいものです。


自転車で行こう。もちろん乗るのではなく、押して。

うちの、子供を載せられる自転車は、わたしはまだ使ったことがありません。
いざ押してみると、思ったより、ずっと重いですね。19キロ近くあるふみだからね。
ふみを抱き上げて椅子に載せて、固定ベルトを、どんやって締めるのかは…

「違う違う、まずこれを下のこれにカチャっと入れて…」発熱中のふみは実演しながら説明してくれてる。

けど、最後の一つは、どうしてもカチャっと入れないのだ、暑いし、早く病院に行きたいし、
「ふみ、いいでしょう?別に全部留めなくだって、ね?ふみは、しっかりここを掴んでればいいよ、ね?」
「うん」ふみは無表情に応じる。


いいのいいの、人がたくさんいる道路で乗るわけじゃないし。だいじょうぶだいじょうぶ。


さて、出発するぞー。あれっ、ハンドル、曲がらないじゃないか、困ったな、あの小児科には直線だけじゃ行けないじょー。


よく見てみたら、ハンドルのところに、“ロック”と“解除”というレバーがあるわ。

レバーを押しました、びくともしません。
押す、上げる、横へ、けど、びくともしません。

これはおかしい。パパに電話をする、パパ普段よくふみを載せて大通りも小道も走るから。

「あれは押すだけじゃない、握らないと」

あのレバーを握る?意味がわからないや。
いいや、とにかくレバーの周辺をあっちこち押したり揺らしたり…、カチャっ、ロック解除!


しかし自転車って、こんなに複雑でしたっけ。もっと誰でもすぐわかるような作りでないと!(誰でもすぐわかるってば)



小児科に着いて、今度はハンドルのロックができない。
いいや、解除のままのほうが不便はないから。



「月曜に来た時、熱あまりないから、抗生剤は出さなかったけど、これじゃやっぱり抗生剤を飲んだほうが…」、先生は聴診して、別に気管支炎などはないとおっしゃって、少し安心。


隣りの薬局で、町内会の会長さんと会って、
「あれ?ぼく、どうしちゃったの?マスクしたりして、風邪?」
ふみ恥ずかしそうに、わたしの腕を掴んで、
「ママ言って、言って」
「なんでママが言うの?ぼく自分で言わないと、風邪ひいちゃったんだ」
ふみはうなずく。会長さんのそばに座り、さっき先生からもらったサッカーのシールを見せる。


会長さんは山のようなお薬をもらい、出て行った。
ふみはマスクをはずしてニヤニヤする。



咳止めのシロップ・抗生剤・整腸剤をもらい、またふみを自転車に載せた。

「お昼なに食べたい?」
「う…ん、おうどん」

うどん?ふみはうどんが好きじゃないはずだけどね。
お蕎麦ならいくらでも食べるけど、おうどんは、この子、ずっと食べない、だったのに。

まあ、本人が食べたいと言うのだから、それでいいんだ。

自転車を押してコンビニに行って、生のおうどんを買った。
レジにいるおばちゃんが、「え?!この子ですよね、こんなに大きくなっちゃって!」
そうか、そういえばふみが大きくなってから、あまりこのおばちゃんと会ったことがないですからね。

「え〜こんなに大きくなったんですね〜、子供って早いですね〜、よく乳母車押してこのへんで歩いてたもんね…、何歳?」おばちゃんはふみに聞く。

4本の指を立てながら、「あのね、風邪をひいたの」とふみが。
「あらそう〜、4歳になったんだ、まあ〜早いね〜、風邪ひいたの?…」


乳母車の中の泣いてばかりの赤ちゃんだったふみが、次あった時はもう歩いて喋ってる4歳、それは驚くことでしょうね。


うちに着いて、急いでおうどんを茹でる。
ざるうどんにして、おいしいおいしいと食べるふみ。熱で味覚がかわったのかしら。
うどん好きになるのは、嬉しいな。
そのうちにママの手打ちうどんを食べさせるね。


体力ないふみは、少し食べて、少し横になって、また起き上がって、食べて、また横になる。
かわいそうに。


食べたら、もう抗生剤が飲める。シロップも飲んで、ふみは眠った。一気に3時間も眠った。

その間、わたしはふみのリクエストの大根餃子を作る。
作り始めてから気づいたけど、小麦粉が足りない!
買いに行くわけにはいかないから、蕎麦粉で代用。

ほぼ5割、蕎麦粉が入ると、皮作りは難しくなる。

蕎麦粉は小麦粉と比べ、粘りはないし弾力もない。
一枚一枚慎重に麺棒で伸ばすしかない。


母から聞いた話しですけど、母親の祖母、つまりわたしの曾祖母ですが、蕎麦粉を使って、よく餃子を作ってくれたという。

純蕎麦粉なので、麺棒は使えない、曾祖母は、小さく丸めた生地を、一枚一枚回しながら親指で押して伸ばしていく。
大家族だったので、百、二百もの餃子を、曾祖母は黙々とそうやって指で伸ばして作ってたそうです。


その曾祖母の気持ちを想像しながら、この五割蕎麦粉の餃子を作りました。

生地がしっかりしていないため、形はきれいにできない。


茹でるのも焼くのも不向きなので、蒸し餃子に。


おいしい。蕎麦粉が入ると、軽くてヘルシー。冷めると皮が硬くなるのがちょっと。あとは手間がかかることね。
ふみは、相変らず食欲がイマイチ。



昼から晴れてきました。

連日曇っていて、サウナ状態のお天気で、それでも陽ざしを浴びるよりいいとわたしは思っていたのですが、
こうやって晴れてみて、これもこれで、なかなか気持ちのいいものですね。

宮崎駿の映画に出てくる夏の空を思い出す。
宮崎駿の映画と言えば、この前、「借りぐらしのアリエッティ」の券を買いました。

本月の17日より上映するそうです。ふみを連れて行こうと思ってます。


ふみの憧れの近所のクレーン、今日も働いてます。


ふみも、よく頑張りましたね、ほんとうに。つらいとか一言も言わず、抗生剤も苦いのに、黙って頑張って飲んでくれています。