ゆめ

少し前に、ある夢を見ました。

わたしは、一人の女性に呼び出された。一ヶ月ほど前に亡くなったNさんがわたしに会いたいと。

その女性とずっと並んで立っているせいか、わたしは終始その女性の顔を見なかった、わりと背が高く、あまり見覚えない感じな人だった。

その女性に従い、わたしは外に出た。
「そこよ」とその女性が言って、見てみたら、少し離れたところで、Nさんが立っていた。こっちには向いてなく、通りかかってる人を見ていた。

「あの…」わたしは傍に立っている女性に「Nさんは、今ご自分のいる世界をわかっていらっしゃいますか?つまり、Nさんが、わたしたちと同じ世界にいると思っていたら、わたし、どういう態度をとればいいのか、難しくなります」と言った。

「それはだいじょうぶ。ちゃんと自分がもうこの世界にいないことは、わかっています」女性は淡々と語る。


離れてるところに立っているNさんは、紺色のドレスのような、やや派手なものを着ている。
気になるのはNさんの髪型。
Nさんのセミロングの髪は、おろしたまま。けど、頭のてっぺんあたりの髪は、なぜがびっしりと貼り付けてるように、ガチガチに固めている。よく髪をアップしているNさんが、なんでこんな変わった髪型をするのかと、不思議だった。


その時Nさんが、わたしたちに気付いた。手を振って、わたしたちに向かって走り出した。

風のようにNさんはあっという間に近付いた。「早いっ」とわたしが驚いてた時、Nさんはわたしの左肩を通り抜けて、あっという間に遠くへ行った。

「どうしたんですか?早いですね」わたしは傍の女性に驚きを隠せない。
「Nさん、まだあの世に行ったばかりだから、コントロールがまだうまくできないんだからね」
そう言ってる間、Nさんはまた風のようにふっと笑って戻ってきた。

次のシーンは、わたしたち三人が喫茶店のようなところに坐ってる。

Nさん、いつの間にか紺色のドレス姿ではなく、生きてる時によく身につけてた白っぽいシャツを着ていた。そして、やっぱりあの変に頭部をガチガチと貼り付けてるような髪型をしてた。

「私、今とっても楽しいの」Nさんはいつもの上品な笑顔で言う。「ほんとうよ。こんなにラクになれると知ってたら、もっと早くこうすればよかったって思うぐらい」

Nさんは、ほんとうに心から幸せそうに笑ってる。

よかった。苦しかったものね。安心しました。「でもNさん、すみません。わかってほしいんですけど、わたし、どうしてもNさんに素直に親しめないんです。もう、いる世界が違うからでしょうか。やっぱり…、素直に今のNさんに馴染めないんです。Nさんならわかって下さると思って遠慮なく言いますけど…」

「うんうん、私ね、ただほんとうにほんとうに楽しいの、ラクなの。それだけを伝えたくて」Nさんは慈悲さえ見える表情で言った。


寒い寒い、寒くてわたしは目覚めた。明け方でした。寒くて布団を引っ張りだして深くかぶって、なかなか眠れなくなりました。


翌日、知人にそれを話したら、びっくりしてた。
「でもあの頭はなんなんでしょうね、なんであんな変な髪型をするのかな」わたしの疑問に、知人も首を傾げる。


夕方になって、「そう言えば、Nさんの最期は、頭で着地したそうで…」と言われ、…!!…、ゾッとしました。それでああいうふうに修復されたんでしょうか。



あの日、「Nさんのお墓参りに行ってきたら?」と知人に勧められたけど、なぜか、足をなかなか踏み出せなくて。

明日はNさんの四十九日です。夕方、お花屋さんに行ってきました。
トルコ桔梗を買いました。白・紺・淡いピンク、Nさんの雰囲気に合ってる色合いではないでしょうか。

明日朝、お参りに行きます。



今日はとっても暑い一日でした。蝉の鳴き声、ちらほら聞こえてきます。