洋館での一時

今日も穏やかな晴れです。
昼近く、ふみと地下鉄に乗って、湯島へ。

湯島に着いたら、もう昼ごはんの時間になって、「ふみ、湯島はおいしいお蕎麦屋さんはきっとたくさんあるよ」
「やったー、お蕎麦食べたい」


交差点であたりを見渡したら、一軒の手打ちそば屋があった。

信号が変わる!ふみと走りだして、間にあった間にあった。
「僕が早かったからよ」、ふみはいつもこうやって威張る。「ママだって走ったわよ」


こじんまりした蕎麦屋に入って、メニューを見ながら、「ふみはせいろでいいのね?」「うん。せいろ」
聞かなくてもいいことだけどね。ふみはお蕎麦なら決まって冷たいのしか食べないです。そば通みたいに。


わたしは温かいお蕎麦にしたかったけど、“あつせいろ”というのに惹かれ、頼みました。

「うどんじゃなくて、そばって、よろしいですね?」店員のお兄さんは重ねて確認する。

ふみをみると、せいろそばより、温かいおうどんの美味しさならわかるという年齢だからでしょう。



久しぶりに、美味しいお蕎麦を頂いた。

わたしの“あつせいろ”は、普通のせいろだが、おつゆが温かい、だけでした。

「う…ん、ふみと同じの、普通の冷たいおつゆだったらよかったな」
「だから僕は普通のせいろがいいって言ったでしょう。じゃ、わさびはあげるよ」
あげるよって、なに割愛したみたいな言い方、そもそもわさびは食べられないくせに。


「ママ、これなに?」ふみはお箸でお蕎麦から、黒い糸のようなものを取り出してみせた。
「どれ?え〜なんだろう、のりじゃないかな、のりよのり」
「のりかな」
そう言ってる間、店員のお兄さんが来て、厨房からおかみさんらしき女性も出て来た。
「ごめんなさいね」と女性が笑顔でずっと謝ってる。

「いいんですよ。だいじょうぶです」とわたしは言ったら、「だいじょうぶですよ」とふみも言う。


しばらくしたら、お兄ちゃんが駄菓子を持ってふみのところに来て、「おわびにはなれないけどさ、これ、どうぞ」
「ありがとうございます」、ふみは大喜び。こうなるとわかったら、もっとノリでもなんでもお蕎麦に入ってればよかった、と思ってるに違いないわ。


ほんとうに久しぶりにおいしいお蕎麦ですこと。



今日は湯島に来たのは、旧岩崎邸で、俳優の田中健ケーナのコンサートを聞くためです。


洋館が好きで、この旧岩崎邸には、2回か3回は来てます、とても好きな洋館です。
でも今日は、洋館に入らなくていい、お庭でにコンサートを聞きに来てるのです。


ベンチにはもう人がいっぱいで、ふみと芝生で腰を下ろした。

年配の方が圧倒的に多い。


真っ白のスーツとお帽子姿の田中健さんは、さすが俳優であり、華がありました。


ケーナって、以前、南米の方が演奏しているのを聞いたことがありまして、軽快で楽しい雰囲気の記憶が残ってました。

田中健さんのケーナは、ちょっと悲しげなものがありましたね。

選曲のせいかもしれません?童謡を何曲を吹いて、とくに「故郷」を聞いているうちに、涙がでそうになった。

田中健さんのケーナ、豊かな表現力で、演奏者が込めている気持ちがとても伝わってきます。


穏やかな青空、優雅の洋館を背景にして、とんぼや鳥が自由に目の前に飛んでいて、ケーナの音色を聞きながら、贅沢な一時を過ごしました。


コンサート中、ふみはずっと近くの落葉が気になって、とんぼじゃないかと思っていたらしい。
コンサートが終わり、ふみは即それを拾いに。

やっぱり、落葉だった。



岩崎邸をあとにして、近くの湯島神社へ。
湯島神社、今日はちょうど菊祭りの最中です。

お参りして、境内の横の男坂を降りる。


ここは、以前も降りたことがあって、その横の、病的な梅たちに、とても印象があった。


中学校の国語授業で習った「病梅館記」という古文を思い出す。


男坂を降りたところに、心城院というお寺がありまして、観音様のお札所になっています。
さっそくお参りしました。
朱印帳を書いて下さったお坊さんは、筆ペンではなく、筆ですらすらと。
感心してそれを話したら、「そうですか」とそのお坊さんは謙虚な笑顔を見せました。


その間、ふみは入口の池に、亀さんをチェックしに行きました。
ここの池には昔から亀がたくさんいて…、と本に書いてあったから。


ふみはすぐ戻ってきて、窓口で朱印を書いているお坊さんに、「亀さんはどうしたの?全然いないよ」
「あ、そうなんですよ。亀がね、いないの」
「え〜〜、いると思って見に行ったのに」
「ははは、ごめんね、でも、昔はいたよ」

がっかりしたふみをみて、お坊さんは、「ごめんね、カメはないけど、アメはあるよ」と、飴玉をふみに下さった。
「はははは」今度はわたしが笑う。


お礼を言って、池にもう一回覗きに行って、ほんとう、亀は一匹もないわ。
「僕が小さい時はね、あ、50年ぐらい前かな、お子さんと同じぐらいの時にね、ここ、亀がいっぱいいたよ」、陽気な男性な方がわたしたちに声がかけてきた。

「え〜〜、じゃ、なんで今、全然いないの」とふみが。
「ほんとうね、寂しいね」
「でも、きれいな金魚がいるから、いいじゃん」ふみは悟ったような顔で言う。
男性は笑った「そうだ、金魚、きれいだしな」

赤い金魚が何匹も泳いでる。池は、このちっちゃい金魚には、まだまだ大きすぎるんだけどね。




さらに歩いて、不忍池へ。

途中、巨大なサボテンと出会う。

不忍池には、大きいな蓮の葉っぱが、池を埋め尽くしている。

鴨たち、のんびりと潜ったり、浮かんだり、まるで絵ハガキのよう。