遊び厭きたら
日曜日の朝は、ふみは決まって、仮面ライダーと、なんとかセイジャーを見ます。
あの動機不明の永遠の戦いの何がいいのか、さっぱり。
「あ、ふみ、コロッケ、朝食べなかったね、忘れたね」
「えー、食べたかったのに、何で言わないの?」
「忘れたのよ」
「ママ、しっかりして」
夕べ、なかなかよく眠れなくてね、ふみはお布団を20回ぐらい蹴って、わたしは20回ぐらい掛けてあげて。
「ふみ、なんで夜お布団を蹴るの?」
「暑いもん」
「真冬なのに」
「ふみ、今日観音さまにお参りに行こうね」
「なんで?」
「なんでって、三十三観音巡りはまだ終わってないし。あ、あとこの前、豊川稲荷で、あの占い師に言われたじゃない、ママはよくお参りをしてるよきっと、それで助かってるって」
「占い師?誰?」
「あのママの手を見てくれた人」
「あーー、あなたは温泉好きでしょう、温泉はどんどん行ったほうがいいと言った人ね」
へぇ〜覚えてるんだ。
テレビを観終わったふみと朝市でお買い物。
スーパーのお兄ちゃんが、「おっ、会うたびに男らしくなってるね君は」
さらにふみが柔道がやってると聞いて、「いいな、柔道をやってるとモテルよ、ほんとう」
牛乳とか買って、うちに下して、またふみと出かけた。
駅近くになって、沈丁花につぼみがいっぱい付いてるの気付き、携帯で写真を撮ろうと…携帯、持ってきてない。
ふみに言ったら、「えぇ〜〜、カバン、僕探してあげるよ」
「や〜本当に持ってないの」
それが聞こえないみたいで、ふみはわたしのバッグの中を探して、やっぱりないとわかって、「ママ、ちょっとしっかりしてよ」
そうね、確かにバッグに入れたんだけどね、違うバッグに入れたのかしら。
「出かける時はふみが言ってよ、財布は?携帯は?とか、そうしたら助かる」
「しっかりしてよ、オトナなんだから」
今日はママはしっかりしてないと思ったか、それからのふみは、いろいろと心配してくれた。
後楽園駅に降りて、行こうとした傳通院へ向かう時も、ふみは何回も道のことを心配してた。「ちょっと人に聞いて。聞いたほうがいいよ」
仕方なく人に聞いて、方向は間違えてないと言われて、ふみはやっと安心したようだ。
長い登り坂を登る途中、急に無力感を感じ、考えたら、朝ごはん、あまり食べてなかった、プラス睡眠そんなに取ってない、それは力ないわ。
坂を登りきったところで、「あ、ふみ、パン屋さんだ!」とわたしは入ろうとしたら、
「パンじゃなくて、あとでちゃんとしたご飯を食べたほうがいいんじゃないの?」とふみに止められた。
なんか今日は、ふみと役を逆にしたようだ。
傳通院で、ゆっくりと観音さまのお参りができました。気持ちがすーっとした。
広い境内に咲いてる紅白の梅や、来る途中の指圧専門学校の彫刻像など、写真撮りたかったな、携帯を持ってないから、指でレンズの形にして、覗きこんで、「カチャッ」「カチャッ」と口で言うしかなかった。
傳通院から出て、すぐ近くに違うお寺があって、そのお寺に幼稚園もあった。
「うちの近くにもお寺でやってる幼稚園があればよかったな」
「なんで?」
「ふみをそっちに入れるもの。お寺の幼稚園だといろいろ教えてるでしょう。今のふみの保育園は、遊んでばかり、別になにか教えたりはしないでしょう」
「それでいいんですぅ。遊んでばかりでいいんですぅ」
「なんで?」
「だってさぁー、遊び厭きないと、勉強しようと思わないよ。遊び厭きたら、勉強するから」
「へぇーー、そうなの?」
「そうよ、だから今は遊んでばかりでいいの」
こんなふうに考えてるんだ。
「じゃふみは小学校に入ったらお勉強をちゃんとする?」
「まあね」
夕食、餃子にしました。
立派な白菜をいただいたから。
淡泊の味ながら、おいしい。