おかいもの

今朝、ふみはいつものように早く起きてしまい、
休みの日には、もう少しのんびりして起きたいのにと、いつものように思うわたし。


昨日、映画の中で、主人公の女の子とその祖母は、ガリガリと焼き上がったパンに、いちごジャムを塗って食べるシーン、二回もあって。
ふみと、朝食はガリガリのパンに、いちごジャムを塗って食べようと決めた。


朝、食パンをトースターに入れる直前、ふみは、「やっぱりいい、ガリガリしないでね、普通の温かいのでいい」


ふみはガリガリやパリパリと硬いものは、まだダメなんだ、まだ子供なんだ。


パンに、バターといちごジャムを塗って。
パンは、フランスパン屋さんから買ったもので、粉も水もフランスから直輸入だそうで、粉は、日本の全粒粉に似たような感じ。

「ふみ、昨日のあの魔女のおばあちゃん、好き?」
「うん。好き」
「どこが一番好き?」
「う…ん、箒に乗ってないところ」
吹き出してしまった。ふみ、魔女という言葉に拘り過ぎやしない?



加湿器が壊れた。この冬、雨は少なくて、加湿器は過労だもんね。


ふみと新宿に向かう。加湿器と、ふみの雨靴や傘、みんな小さくなり、通園のリュックも、長さを調節するところも効かなくなって、みんな新しいの買わなくちゃ。


今日は快晴。空は何事もなかったかのように、穏やかで眩しくて。

駅に向かう途中、ふみはずっとオズの魔法使いの歌を口ずさむ。
♪エメラルドの都には、オズの王様がいらっしゃる〜

わたしもまねして「オズの王様がいらっしゃるよ〜」
「違うよ、いらーしゃーーる〜、だよ」


オズは、この前、保育園の「大きくなった会」という発表会での、年長組の劇です。
半分ミュージカル風で、セリフの所どころが歌になってる。

練習の時、ふみたちの耳にも入ったのでしょう。


ふみは歌いながら、ウルトラマンの人形を振り回す。
出かける前に、ふみは「ママは念のためにふみと一緒、ふみは念のためにウルトラマンと一緒」と、完全にアニメの「おさるのジョージ」の中のセリフ(黄色い帽子のおじさんは念のためジョージと一緒、ジョージは念のため玩具と一緒)。


デパートで、春を迎えるためのバーゲンをやってる。さまざまな春らしいスカーフが目をパーッと明るくさせる。が、ふみは退屈そうに。


靴、なんと、1050円!
白、赤、ゴールド、の中で、この黒の一足を購入。

本皮じゃないけど、この値段だもの、スリッパ並よ。というか、デパートって普段どれだけ儲けようとしてるの?ね〜、…、ふみは全くわけわからない顔。

まあ、わけわかったような反応なら、それもそれで困るけどね。


自分の靴、ふみの傘・雨靴・通園カバン、を持って、結構な荷物。

昼食は中華屋さんで、ふみは大好きな中華五目焼きそば、わたしはなぜかチャーハン食べたくなった。


ふみは小さい時からチャーハン食べない、理由もなく。小さい子がチャーハンを食べないのは、あまり聞いたことがないけど。


食事中、ふみはまたお相撲について、熱く語っていた。たくさんの力士の名前をあげ、現役のならまだしも、昔のしこ名、わたしにはさっぱり。大吟醸の銘柄と区別が付かないわ。


「でも、春場所だけじゃなくて、夏場所も開催できないのかもしれないって」

「え?!それって、いいの?え?!本当?白鵬とか、悪いことをしてないのに」

「ね〜、しょうがないよ。ふみ、悪いことしたお相撲さん、どう思う?」

「う…ん、強いけど、やっぱり弱いね、うん、弱い」

「おっ、いいこと言うね。そうね、悪いことする人は、やっぱり弱いからよ。正しいことを続けるのは、たいへんなことよ、すごく頑張らないと、悪いことをするの、らくよ。だから悪いことをする人は、みんな意識弱い人」

「たとえば?」

「たとえば?たとえばね、ゴミを捨てに行って、遅かった、もうゴミ収集車が行っちゃった。誰も見てないし、そのまま捨てちゃえば、と思う人と、たいへんだけど、やっぱり家までまた持って帰ろうと思う人」

「パパみたいに?」

この前、パパが捨てに行ったら、ゴミ収集車に間に合わなかった。もちろん、パパはごみを捨ててなかった。


「あ、お酢」と、ふみは、麺をとり皿に分けてあげるたびに、麺に掛けるようにと、指示する。
お酢を、こんなに食べる人はあまりいない?」とふみが。
「でしょうね。あ、黒酢、まだ注文してないね」
「でもぼく、黒酢じゃなくてもいいよ。普通のお酢で。お酢って、やっぱり体にいいでしょう?」
「うん。お野菜もよ」
ふみは黙る。


さあ、今度、電機量販店へ向かおう。


この南米らしき方が、悲しげなメロディを演奏。

聞いている間、男の人が近付き、名刺を渡しながら、すみません、あなたのお子さんとてもかわいくて、わたしは芸能事務所×××の×××、今、子役を探してるんですけど、よかったら、明日午前、イベントがありますけど…。

せっかくですけど、この子、こう見えても照れ屋さんで、向いてないと思うので、すみません。

明日のイベントに参加するだけでも、お母さんもぜひご一緒に。


せっかくですけど、すみません。


男の人がやや不愉快な顔を見せ、去った。

「なに?」とふみ。

「なにもないよ。こういうの街中いるよ。テレビ出ないかって、ほら、前もこんなことがあったじゃない」

「ああ、パパがダメって言ったあれ?僕、行かないよ、中学生になっても高校生になっても。でもママ、なんでダメなの?」

「そうね、あまりにも異様な世界ですから、そんなの触れちゃ、やっぱりダメよ」


「すみません、ちょっといいですか、あなたの面相はとてもいいけど…」今度は占いっか。


たくさんの加湿器があって、どれがいいのかわからないし、荷物が多いし、適当に選んで、ふみとバスで帰ってきた。


バス停で、老婦人がふみに、「あら、このウルトラマン、よく持ってるね、これずいぶん昔のでしょう。だってわたしのね、息子がね、持ってたもの。大学生になったら、わたしがお部屋を整理して、捨てようとしたら、僕の宝物だ!と言ってね、息子に怒られたのよ」
「なんで捨てようとするの?大学生は今なにしてるの?」と、ふみはそのご婦人はしばらくお喋り。


バスに乗ってから、ふみが持ってるウルトラマンを聞いたら、
初代ウルトラマンよ」とふみが。
初代、だからなんだ。


夕方、パパが帰ってきて、ふみは大喜びで、パパとお風呂に入って、ベッドで、パパがちょっと本を読んであげたら、もうすんなり眠った。