違う風景
朝から暖かい。ふみにコートじゃなく、薄めのジャンバーに、わたしもコートを脱いで、ショール一枚にしました。
暖かいのは、ほんとうにいいことですね、体がのびのびできて、気分までラクになります。
昼間、気温は20℃まで上昇、南風がやや強く吹いて、昼食の時にテレビを見ていたら、東京は今、春一番が吹いてると。
ザリガニを日向ぼっこさせる。暖かい陽ざしの中で、ザリガニは慌ててるようで、手足をパタパタさせて、その時、ザリガニ全身、あの長いひげまで、ふわふわの、綿埃のような、緑の苔ができてるのを気付いた。
わ〜ドラマに出て来てる、石の下に五百年の孫悟空のようだ。
餌をやったら、それも食べた。
水を何回も何回も取り換え、捨てた水に、苔もたまに流れて行く。
ザリガニは、これで完全に冬眠から蘇ったのかしら。
「ごめんね、暖かいのは今日だけみたい、明日、10℃ぐらい下がるみたいよ」
お迎えの時に、ふみにも気温が急激に下がりそうなことを話した。
「暖かいのは、今日だけってこと?」
「そうらしいよ」
「えぇ〜、つまんない」
「あと一ヶ月ね、お彼岸が過ぎたら、もうだんだん暖かくなるのよ」
「お彼岸?」
「そう、お彼岸」
「じゃ、おはぎね」
「そうね、お彼岸の時、おはぎを食べようね」
「あ、ふみ君のお母さん」、担任の先生だ。
「はい、なんでしょう」('_')
今日の昼食当番は、月齢が一番下のM君で、M君がお味噌汁を運ぶ時、ふみ君は手を伸ばして受け取って、その時、お味噌汁が引っくり返って、ふみ君の服は全部濡れて…
~~(^。^).。o○
いいんですよいいんですよ、全くかまいません。
ふぅーー===
玄関で、「ふみ、お味噌汁、ヤケドしなかった?」
「保育園の食べ物はみんな熱くないんだから」
保育園から出て、塾へ向かう。
途中、水道工事で通れません。遠回りしなければならないのです。
「え〜、荷物が多いのに、たいへ〜ん」とわたしが言ったら、
ふみはわたしの手を取って、もう片手はわたしのその手の甲を軽く叩きながら、「いいんじゃない、違う風景が見えるから」
おぉぉぉ〜〜
遠回りは、たいした“違う風景”はなかったけれど、気持ちはすーっとした。
塾で、ふみは分厚い宿題を提出、ほめられて、またいっぱいお勉強をその場でやった。
終わるたびに先生に見てもらう。
その短い間でも、ふみは退屈になる。
先生の机を両手で支えて、ジャンプして、先生に制止され。
(ふみ、あれは机、鉄棒じゃない、先生に怒られるよ)
ふみは先生にあれこれと、関係ないことを聞く、
宿題を直す先生は、ふみに静かにするようにと命じる。
宿題を全部見終わった先生の視野には、ふみがいない。
「ふみ君!ふみ君?」
「はい」ふみ君は、先生の机の前あたりで、あぐらをかいてる。
(ふみ、あなたはどこまで自由なの?周りを見てみなさい。言ったでしょう、大多数の人が従っているルールに従いましょう、心はどうであろうが、それがルールっていうものよ、ママはいつも言ってるじゃないの)