Tシャツ

「ぼくのこれは、ビーキュウシ」とふみは口を開いて、抜けた前歯のところに、新しく生えてきた、まだちっちゃい歯を見せてくれる。


「永久歯を大事にしてね」っていつも言ってるけど、ビーキュウシって。

あははは、A級歯、B級歯に、またパパのジョーク。


「そう、ビーキュウシ。ママ、ビーキュウシは、永久歯よりちょっと小さい?」
ふみは全く意味をわかってないんだ。


昨日、ふみが半袖にしたいと言って、その後、さらに詳しく、「あのウルトラマンのにしたい」と。

去年、今年夏に着れるような、ウルトラマンのTシャツを買ってあげた。

まだ買ったままで、洗濯もしてないので、夜、急いでお洗濯をした。


今朝6時ちょっと過ぎ、ふみは目覚めて、声をひそめて、「ママ、ママ、あのウルトラマンのTシャツは乾いたかな、乾いたでしょう」


登園道、もうふみは目を細めて、嬉しそうな気持ちを隠しきれない。



今日は風が強く、地面にたちまち花びら絨毯。



夕方の塾は、パパが連れて行って、お迎えは、わたし。

時間を計ってもう終わったところだと思って行ったら、まだお勉強の真最中。


ふみは席に座って、わりと集中してやってる。
すぐ後ろに座るわたしを、全然気付いてない。

数字を書いて、あまり気に入らなかったのか、また消しゴムで消してる。


長い時間そうやって、ふみは落ちたものを拾う時、わたしに気付いた。
「お迎え?見に来た?」とふみは小さい声で聞く。
「お勉強に集中して」

さらに30分待って、やっと終わった。


帰り道で、「半袖で寒くない」と聞いたら。
「すずしいけど、寒くないよ」とふみが。やせ我慢じゃないかい?